帝塚山大学「中・近世の美術A」
─受講生へのお知らせ─
1、講義の目的
  この講義では中・近世の美術を考える上で主に仏像や神像に注目して取り上げる。講義を通じて、日本文化の核ともいうべき宗教文化の表象である宗教美術について基礎的な知識を獲得し、自らの文化的背景について考える教養を身につける。かつ、残されてきた仏像や神像などから、造像に関わった人々の歴史をいかに読み取ることができるのか、という視点を特に重視していきたい。
  残されてきた文化財を通して歴史を読み解く視点を自ら構築するためには、対象となる「モノ」をあらゆる角度から眺め、そして相対化する眼差しが必要となる。対象を相対化しながら把握する力は、単に学問上のスキルなのではなく、社会人として社会の中で自らの立ち位置を決定していく上で、重要な羅針盤ともなる。美術作品と対峙することで、自らの眼差しを自覚できるよう講義を構成していきたい。

2、講義の流れ
  この講義では中近世の美術について、主に仏像から概説する。前半では、運慶に代表される、奈良を基盤として活躍した奈良仏師の仏像について紹介する。後半では神像などについても触れ、それら彫刻資料から読み取ることができる歴史について考える。

3、成績評価の方法
  @平常点50%(授業への積極的参加度をリアクションペーパー等で評価し採点)
  Aレポート50%(50点満点の課題を出題)→4を参照

4、レポートの課題について
  本講義ではレポート課題を課す。課題対象展覧会のうち一つを実際に鑑賞し、そこで展示・公開されている資料の中からあなたが興味を抱いた作品1点を選び、以下の@〜Bの論点を順番に記述してまとめること。文字数は問わないが、レポート表紙には名前・学籍番号・訪れた展覧会名を記すこと。

@、「第一印象」
  まず、興味を抱いたその作品を鑑賞して、あなたが感じた率直な第一印象を書く。
 →その作品がもつ特徴のうち、何が自分を振り向かせたか、何に興味を持ったのかを、自問     自答して、伝えてほしい。
   採点基準:その作品を選んだ理由を伝える力(問題提起、問題設定の力量など)を見る。

A、「作品の特徴」
  つぎに、興味を抱いたその作品の特徴を具体的に記述する。
   →その作品が、いかなるかたちであるのか、いかなる文様であるのか、いかなる素材であるの    か、いかなる技法で造られているのかなど、作品を自らの言葉で詳細に表現してほしい。
   採点基準:作品を言葉に置きかえて他人に伝える力(観察力、表現力など)を見る。

B、「作品が制作された理由(歴史)」
   最後に興味を抱いたその作品が制作された理由(歴史)について書く。
  →その作品が、誰が何のために作ったのか、どのように伝えられたのか、関連資料も調べて考    えて欲しい。空想ではなく、事実に近いと思わせる、説得力ある説明を期待する。
 採点基準:作品から歴史を叙述できる力(論理的思考、発想力など)を見る。

5、レポート課題対象の展覧会
 課題対象の展覧会は、訪れやすい場所を重視して、近畿の博物館・美術館から選定する。

レポート課題対象の展覧会(◎はオススメの展覧会) ※随時追加します

奈良県
奈良県立美術館
 特別展 奈良の刀剣−匠の美と伝統− 4月21日〜6月24日
奈良国立博物館
◎創建1250年記念特別展 国宝 春日大社のすべて 4月14日〜6月10日
◎修理完成記念特別展 糸のみほとけ−国宝 綴織當麻曼荼羅と繍仏− 7月14日〜8月26日
 常設展示(新館におけるコレクション展示、なら仏像館の展示) 随時開催
大和文華館
 尾形光琳筆「中村内藏助像」と人物表現の魅力 4月13日〜5月20日
◎大和文華館の水墨画−雪村作品一挙公開!− 5月25日〜7月1日
 特別企画展 大和文華館の日本漆工−特別出陳:酒井抱一下絵・原羊遊斎作 蒔絵作品− 7月6日〜8月19日
※興福寺・東大寺など、寺院を拝観して安置される仏像について取り上げてもOK。

大阪府
和泉市久保惣記念美術館
 特別陳列 所蔵名品撰−久保惣コレクションの絵巻− 4月7日〜5月27日
逸翁美術館
 開館60周年記念展 One more 未来につなぐ 和の意匠力 3月24日〜5月6日
大阪市立美術館
 特別展 江戸の戯画−鳥羽絵から北斎・国芳・暁斎まで 4月17日〜6月10日
 コレクション展 随時開催
堺市博物館
 企画展 堺市指定文化財−絵画・彫刻・工芸品− 4月28日〜5月27日
高槻市立しろあと歴史館
 企画展〈シリーズ高槻の村と町〉樫田 丹波の山村と仏像・信仰 3月17日〜5月13日
中之島香雪美術館
 珠玉の村山コレクション−愛し、守り、伝えた− T.美術を愛して 3月21日〜4月22日
 珠玉の村山コレクション−愛し、守り、伝えた− U.美しき金に心をよせて 4月28日〜6月24日

京都府
京都国立博物館
◎特別展 池大雅−天衣無縫の旅の画家− 4月7日〜5月20日
 特集展示 新収品展 6月12日〜7月16日
 名品ギャラリー 随時開催
細見美術館
 琳派展20 細見コレクション 抱一の花・其一の鳥 3月3日〜4月15日 
龍谷ミュージアム
◎特別展 お釈迦さんワールド−ブッダになったひと− 4月21日〜6月17日
  
滋賀県
滋賀県立安土城考古博物館
◎特別展 武将たちは何故、神になるのか−神像の成立から天下人の神格化まで− 4月28日〜6月17日
彦根城博物館
 特別公開 国宝・彦根屏風 4月13日〜5月8日
MIHO MUSEUM
◎特別展 猿楽と面−大和・近江および白山の周辺から− 3月10日〜6月3日

兵庫県

和歌山県
高野山霊宝館
 企画展 室町時代の高野山 4月14日〜7月8日
和歌山県立博物館
 企画展 きのくに 縁起絵巻の世界−開かれる秘密の物語− 3月10日〜4月15日
 特別展 紀伊徳川家 やきもの新時代−富国と栄華の19世紀− 4月21日〜6月3日
 企画展 博物館でいきものめぐり 6月9日〜7月8日

※ぜひ追加して欲しいという展覧会があれば、講義の際に申し出て下さい。


6、レポートの提出日  4月〜7月の各授業の日のうち、いつ提出しても構わない。