展覧会・文化財を見てきました。

─展覧会鑑賞・文化財見学に関する勝手な感想─

最終更新日 6月26日


平成29(2017)年度

4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月


4月8日
奈良国立博物館
 特別展 快慶−日本人を魅了したほとけのかたち−
(4月8日〜6月4日)
 鎌倉時代を代表する天才仏師「巧匠」「アン阿弥陀仏」快慶の作例を過去最大の規模で一堂に集め、快慶が生きた時代とその造像活動を重ねて浮かび上がらせつつ、初期から晩年までの作風の変遷をたどる。端正で華麗なその像容の魅力のみならず、康慶一門に属しつつも、後白河院周辺や重源との間に特別なつながりを有し、敬虔な信仰心に基づく独自の造像活動をなしえた快慶その人の魅力にも迫る。東大寺阿弥陀如来立像や僧形八幡神坐像、金剛峯寺四天王立像などどれをとっても重要な在銘作例ばかりであるが、ボストン美術館弥勒菩薩立像、キンベル美術館釈迦如来立像、メトロポリタン美術館地蔵菩薩立像・不動明王坐像の4躯の在外作例も請来し、東大寺西大門勅額の八天王像を分離して鑑賞を容易にするなど、快慶様式の把握と理解を大きく助ける画期的な展示。図録(265ページ、2300円)には未出陳の快慶作例一覧、快慶作例の銘記一覧(未出陳品含む)、文様集成、X線透過画像、そして膨大な参考文献と各論が掲載され、今後の快慶研究の上における基礎資料となる重要な成果物。会期中、遣迎院阿弥陀如来立像(4/11〜)、醍醐寺弥勒菩薩坐像(4/25〜)、西方院阿弥陀如来立像(4/25〜)、藤田美術館地蔵菩薩立像・阿弥陀如来立像(5/16〜)が続々と合流。何度も通わねばならぬ。

安倍文殊院
 快慶展を見て外に出ると雨が降りそうで、傘がないので東大寺南大門はあきらめて急ぎ車に戻り、安倍文殊院へ向かう。巨大な文殊菩薩及び侍者像を拝観。建仁3年(1203)10月3日に南大門金剛力士像の開眼供養が行われた5日後、10月8日に本像頭内に重源・同朋衆・快慶の名が記され、11月30日には東大寺総供養が行われている。疾走するように続く大事業の中、重源の文殊信仰に基づいて行われた本像の造像は、東大寺復興事業と一連のものであったと提起されている(谷口耕生「重源の文殊信仰と東大寺復興」、奈良博『大勧進重源』図録、2006年)。実際の群像の完成は承久2年(1220)までかかっているが、面貌表現は建仁年間のもので、中尊の木作りは総供養までには随分進んでいたのであろう。五台山文殊の宋仏画を元に、破綻なく立体化して細部まで洗練された大迫力の姿に、快慶とその配下の集団の練度の高さを見る。

4月16日
大阪市立美術館
 特別展 木×仏像−飛鳥仏から円空仏へ 日本の木彫仏1000年−
(4月8日〜6月4日)
 主に関西地方の木彫仏を集め(ほか東博・東藝大美のコレクションも)、樹種や技法、仕上げの違い、木への聖性のまなざしに目配りしながら、概ね年代順に並べて様式の変遷を提示する。大美収集の館蔵品・寄託品もフル活用。飛鳥〜平安時代前期の作例を集めた第1室では、唐招提寺伝獅子吼菩薩立像(8c)、東大寺弥勒仏坐像(8〜9c)と並び、奈良・宮古薬師堂薬師如来坐像(9c)が寺外初公開。ありがたく像の周囲をぐるぐるまわりながら、正側背をじっくり鑑賞し、その圧倒的な造形を堪能する。解説では印相や伝来環境から唐招提寺との関係性を提示しており、重要な指摘。ほか、長圓寺十一面観音菩薩立像(9c)、三津寺地蔵菩薩立像(10c)、孝恩寺虚空蔵菩薩立像(10c)、河合寺二天立像(11〜12c)、東光院釈迦如来坐像(11〜12c、元清凉寺釈迦如来立像光背化仏)、専修寺阿弥陀如来坐像(12〜13c)、四天王寺十一面観音立像(13c)、大日如来坐像(14c、和歌山・明王院伝来)など、大阪府下の重要作例を重点的に鑑賞。図録あり(172ページ、2000円)。

4月17日
杏雨書屋
 特別展示会 杏雨書屋の仏典
(4月17日〜4月22日)
 武田薬品五代社主武田長兵衞設立の杏雨書屋のコレクション展。重要な仏典をセレクトして公開。磧砂版大蔵経(南宋時代刊。朝鮮慶尚道天徳寺藏本を対馬の宗貞守・成職が入手し伊津八幡宮奉納)は、経典と籤(検索用下げ札)、幅子、経箱をともに展示。京大総長羽田亨旧蔵敦煌・トルファン関係資料からは、正始元年(504)大涅槃義記、貞明6年(920)仏説仏名経、阿弥陀如来や菩薩半跏像の印仏が捺された印沙仏など。平安時代中期写本の遍照発揮性霊集巻六は内藤湖南旧蔵。ほか元徳3年(1331)書写の聖徳太子伝暦、保元元年(1156)薬種抄などなど50点がずらり。図録あり(52ページ、無料)。

4月26日
東京国立博物館
 平成29年新指定国宝・重要文化財
(4月18日〜5月7日)
 恒例、新指定国宝・重文お披露目展示。国宝となった深大寺釈迦如来倚像、中尊寺の仏像と共通する作風の宮城・お薬師様文化財保存会千手観音坐像(脇手も良好に残る)、脇侍が跪坐して幡を執る来迎形の廬山寺阿弥陀如来及び両脇侍坐像(指定では13世紀初めと時期限定)、平安時代後期のまとまった神像群である南宮神社神像・随身立像をしっかり鑑賞。

 特集 幕府祈願所 霊雲寺の名宝
(4月25日〜6月4日)
 梵字悉曇の碩学として著名な浄厳を開基とする霊雲寺伝来資料を展示。弥勒曼荼羅図(重文)、諸尊集会図(重文)、日吉山王本地仏曼荼羅図(重文)、十六羅漢図(重文)、浄厳の解釈による独自の両界曼荼羅図など仏画の優品ずらり。リーフレットあり(8ページ)。

 特別展 茶の湯
(4月11日〜6月4日)
 茶の湯を巡る文化や美術を通史的に紹介。冒頭から牧谿筆観音猿鶴図(大徳寺)、稲葉天目(静嘉堂文庫美術館)、油滴天目(大阪市立東洋陶磁美術館)、青磁浮牡丹文花瓶(アルカンシェール美術財団)等々が並ぶ豪華さ。選りすぐりの名物や優品を、大盛況で十重二十重の頭越しにちらりちらりと鑑賞。図録(430ページ、2800円)で勉強しよう。

びわ湖長浜KANNON HOUSE
 長浜市 長浜城歴史博物館 聖観音菩薩立像
(3月14日〜5月21日)
 もと長濱八幡宮神宮寺・新放生寺の別院妙覚院に安置され、のち北門前観音講に伝わり、現在は長浜城歴史博物館の所蔵となる10c末〜11c初の観音像を出開帳。裾部はかつて朽損したようで脛から下は補材となっているが、背面に正徳元年(1711)の修理銘があり、先の伝来も伝える。仏像の伝来把握の上で、修理銘はとても重要。

サントリー美術館
 六本木開館10周年記念展 絵巻マニア列伝
(3月29日〜5月14日)
 優れた絵巻の数々を、後白河院、花園院、後崇光院・後花園院、三条西実隆、足利将軍家、松平定信と、それを享受し作製させた熱烈な愛好者に着目する視点のもと、集約する。またそうした愛好者の絵巻を巡る動向を、数々の古記録、日記も徹底して集めて作品の歴史的位置を明確にしており、タイトルのキャッチーさに比して、美術史の論文を懇切に展示化したとも言うべき、正統派「THE 美術史」展示。病草紙断簡、春日権現験記絵、石山寺縁起絵巻、矢田地蔵縁起絵巻、絵師草紙、彦火々出見尊絵巻、玄奘三蔵絵、福富草紙、芦引絵、當麻寺縁起絵巻、桑実寺縁起絵巻、譽田宗廟縁起絵巻、法然上人絵伝…、と次々に顕れ、繰り広げられる絵巻に驚き拝み見るその心持ちは、まさにかつての愛好者たちとも重なるよう。図録あり(246ページ、2600円)。

三井記念美術館
 創建1250年記念 奈良 西大寺展−叡尊と一門の名宝−
(4月15日〜6月11日)
 西大寺と真言律宗の名宝の出開帳展。展示室の構造上、全彫刻作品が間近に迫り、興正菩薩坐像、愛染明王坐像、文殊菩薩・善財童子・最勝老人像、大黒天立像と善派仏師の作例を堪能。浄瑠璃寺・岩船寺・元興寺・宝山寺・称名寺・極楽寺など真言律宗寺院の文化財も集める。三井記念美術館・あべのハルカス美術館・山口県立美術館を巡回。図録あり(288ページ、2700円)。

5月6日
兵庫県立歴史博物館
 特別展 ひょうごの美ほとけ−五国を照らす仏像−
(4月22日〜6月4日)

 兵庫県内に伝来した数多くの仏像を、この四半世紀における調査研究の成果を踏まえて集約し公開する。白鳳時代の應聖寺誕生釈迦仏立像(平成19年確認)、平安初期の日野辺区聖観音坐像(平成14年確認)、平安前期の瑠璃寺不動明王坐像(昭和61年確認)、平安中期の圓教寺性空上人坐像(平成12年確認)、快慶の作風を示す浄土寺阿弥陀如来立像(平成20年確認、来迎会所用か)、小谷区阿弥陀如来立像(加西市史編纂時確認)、鎌倉前期の圓教寺毘沙門天立像(近年の護法堂修理時に確認、特殊な用材の慶派作例)など着実な調査の足取りを示すとともに、金蔵寺阿弥陀如来坐像(奈良時代)、随願寺毘沙門天立像(平安後期)、萬勝寺阿弥陀如来坐像(鎌倉初期)、法恩寺菩薩坐像(宋時代)など古代〜中世の作例から、江戸時代の宮内法橋や厚木民部の作例までをフォローする。パネルでも多数の作例を紹介して、兵庫県の仏像の流れを一望する彫刻史研究展示の集大成。「展示」の背景には、学芸員による膨大な調査研究の営みと知の蓄積があることを感じさせる重厚な企画。こうした成果を検証し深化させていくことが、知の共有化の恩恵を受けた研究者の責務と気を引き締める。図録あり(152ページ、2000円)。鑑賞後、同行した子と、姫路城散策。ゴールデンウィークでご訪問者多く、天守閣内は大渋滞。

5月16日
高野山霊宝館
 企画展 霊場高野山−納骨信仰の世界−
 (4月15日〜7月9日

 弘法大師とともに弥勒下生の時を待つ高野山信仰に基づいた、高野山奥之院の埋経・納骨・造塔の諸相を紹介。奥之院御廟内から出土した比丘尼法薬埋納の経塚資料(重文)、南保又二郎納骨塔である金銅宝篋印塔(重文)といった紀年銘を有する資料を核に、青磁や白磁の舶載品から瀬戸や常滑の壺、小型のもの(壺形・蓮弁形・仏形など)などさまざまな納骨器が並ぶ。ほか高野山近隣の村で製作された位牌や、宝寿院決定往生集(重文)、報恩院高野山蓮華曼荼羅も。紫雲殿では至正10年(1350)銘を有する高麗仏画の五坊寂静院弥勒下生変相図や、阿弥陀聖衆来迎図(大正期模写本)など、阿弥陀像・弥勒像が並ぶ。後期(5/30〜)には南宋仏画の成福院阿弥陀如来像もお出まし。図録あり(8ページ、200円)。

5月28日
奈良国立博物館
 特別展 快慶−日本人を魅了したほとけのかたち−
(4月8日〜6月4日)
 再訪。醍醐寺弥勒菩薩坐像、遣迎院阿弥陀如来立像と、東大寺阿弥陀如来立像・地蔵菩薩立像に時間をかけつつ、初期作例を重点的に鑑賞。同行した娘は着衣形式三類型のパネルを見て、これは第1、あれは第2、こっちは第3とチェックしながら会場一周。本館の仏像見ても平安後期の像に第1、鎌倉後期の像に第3とチェック続行。

6月25日
逸翁美術館
 開館60周年記念展 第二幕 開け!絵巻
(6月10日〜7月30日)
 館蔵の絵巻物及び経典類を多数展示。大江山絵詞(重文)、芦引絵(重文)、白描絵料紙金光明経(重文)、十巻抄(重文)、露殿物語(重美)のほか、石山寺縁起絵巻、春日権現験記絵巻、蒙古襲来絵詞、六波羅合戦絵巻の江戸時代模本や松岡映丘写の白描枕草子絵巻など、収集者(小林一三)に絵巻物というジャンルを体系的に収集する意図があったことを実感する。和歌山関連として高野大師行状絵巻、絵因果経断簡(勝利寺本)、道成寺縁起絵巻、熊野本地絵巻、西行物語絵巻もじっくり鑑賞。大江山絵詞、熊野本地絵巻は、物語内容を絵で要約したパネルを用意し、前者はプロジェクターでの内容絵解きも準備して、絵巻物の理解を助ける。今回の展示に際しての図録はないが、同館編『絵巻 大江山酒呑童子・芦引絵の世界』(2011年)に経巻類以外はだいたい掲載(1080円)。
 鑑賞後、近隣の勝尾寺に足を伸ばして拝観。瀧安寺(箕面寺)も行こうと思うも時間が足らず断念。

7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月


観仏三昧