平成16(2004)年度「展覧会・文化財を見てきました。」

4月3日
岸和田市立郷土資料館
特別展 谷に刻まれた文化
(3月18日~5月9日)
岸和田市内を「谷筋」という地域区分で3ヶ所設定して、そこで育まれた歴史と文化を提示。旧石器から近世までの幅 広い展示資料。仏像では大威徳寺役行者像・前鬼像が文安4年(1447)銘あり。堺市博の行基像(南北朝)も。久米田 寺の寺領坪付帳は天平勝宝元年銘があるが中世の偽文書とのこと。図録あり(54ページ、500円)。

4月17日
高野山霊宝館
常設展。注目は浮彫九尊像(柿木九尊像・重文・平安初期)など。四天王像(平安中期・重文)、中尊寺経なども。

4月18日
願成寺
和歌山県海南市別所。重文・千手観音坐像の特別公開。像高182.7㎝、素木の像。13世紀半ばの南都仏師系。湯浅氏関連か。

4月24日
和歌山県立博物館(宣伝)
 開館10周年記念特別展 きのくにの歴史と文化
第1期展示 徳川頼宣と『御附』の家臣たち
 (4月24日~5月30日)
元和5年(1619)、徳川家康の第10子である徳川頼宣が紀伊国に入国し、御三家の一つである紀伊藩が誕生しました。 この展示では、紀伊徳川家ゆかりの紀州東照宮や長保寺の所蔵品を中心に、家康と頼宣、さらに家康から頼宣に付けられた家臣に関わる資料を展示します。

4月30日
神奈川県立金沢文庫
 特別展 十二神将─守護神集結─
(4月22日~5月30)
神奈川県内の十二神将像の優品を展示。近時確認された宝城坊本堂の像は、定智本の図像と極めて一致するもので、12世紀の作。称名寺の絹本著色十二神将像(重文)は、眷属・侍者他を配した特殊な図様。それぞれ図録(64頁)に詳細な文章あり(執筆:山本勉・向坂卓也)。ご一読を。

東京国立博物館
弘法大師入唐1200年記念 空海と高野山
 特集陳列 高野山天野社伝来の仮面と装束
(4月6日~5月16日)
平日でも大賑わい。ゆったりとした展示空間は、さすが東博。血曼荼羅の見せ方は効果的(展示室の入り口から視野全てを占める。迫力あり。)。次は和歌山県博の番です。効果的な見せ方は…、ちょっと難しいかも…(T_T)。図録あり(2500円)。天野社伝来の仮面、やっぱりおもしろいなあ。

特別展観 新指定国宝・重要文化財
(4月20日~5月5日)
恒例の新指定文化財の展示。彫刻では京都府・弘源寺毘沙門天像(9世紀)に目が釘付け。こんなお像があったとは…。絵画では岐阜県・来振寺五大尊像が国宝に格上げ。背筋が寒くなるほどの「怖さ」を表出。

日本彫刻常設展・小特集川端龍子遺愛の仏たち
(4月6日~6月30日)
個人蔵大日如来坐像は12世紀末の運慶工房作品。『MUSEUM』589号山本論文に尽きる(ミュージアムショップにて販売。1500円)。慎重かつ大胆。川端龍子、木心乾漆の十一面観音立像(8世紀)、驚き…。

5月2日
東寺宝物館
特別公開 甲本修復完成記念 東寺の大曼荼羅図─甦るみ仏 花開く美─
(3月20日~5月25日)
両界曼荼羅の第2転写本、建久2年(1191)制作の甲本修復を記念した展覧会で、伝真言院曼荼羅(9世紀・国宝)はじめ、多くの曼荼羅を展示。ただし甲本自体は展示期間が限られているので注意が必要(金剛界が5月9日まで。後は展示されません。)。図録(60頁・1500円)、甲本の図版盛りだくさん。必見。

京都国立博物館
亀山法皇700年御忌記念 南禅寺
(4月6日~5月16日)
亀山法皇像(14世紀)、一山一寧像(14世紀)は優れた肖像彫刻。亀山法皇像の盛り上げ彩色は緻密。龍湫周沢所用の応夢衣の浮織文様を見ていると、盛り上げ彩色の求めたところがよく分かった。図録あり(312頁・2200円)。

特集陳列 南禅寺一切経 秘蔵詮─高麗版画・幽玄な山水表現─
(4月6日~5月16日)
南禅寺所蔵の高麗版秘蔵詮を公開。含まれる挿絵が優れた山水画であり、50近くの場面のほとんどを一堂に展示している。壮観。

高槻市立しろあと歴史館
特別展 発掘された埴輪群と今城塚古墳
(3月20日~6月20日)
開館1周年記念展。人や動物、建物などの埴輪による祭祀の実態が具体的に判明する今城塚古墳の埴輪を展示。NHKの協力による復元図なども豊富。展示室はすこし狭いが、埴輪群が露出ですぐ目の前で見られる。図録(82頁、1500円)は研究論文も多く、読み応えあり。

5月6日
長谷寺宗宝蔵
長谷寺春季特別寺宝展
(4月19日~5月11日)
国宝・法華経(鎌倉時代)、重文・銅造十一面観音立像(鎌倉時代)など。

聖林寺
国宝・十一面観音像(奈良時代)。光背復元図は制作途中での公開。

5月7日
飛鳥資料館
特別展 飛鳥の湯屋
(4月9日~5月23日)
昨年、川原寺旧境内で発掘された、最古の鉄釜鋳造地遺構のはぎ取り資料を中心に、各地の湯屋や鉄釜を紹介。図録あり(36頁・1000円)。

奈良県立橿原考古学研究所附属博物館
特別展 天武・持統朝─その時代と人々─
(4月17日~6月6日)
飛鳥時代後期、天武・持統朝の時代を、出土遺物から展観。石光寺十二尊連座セン仏は山田寺出土のものと同じ型だが、文様の仕上がりはこちらのほうがシャープ。骨蔵器の優品も集まる(文祢麻呂墓・拾生古墓・威奈大村墓・加守古墓)。山田寺(さんでんじ)舎利容器も。図録あり(88頁・700円)。

水平社博物館
企画展 西光万吉の花鳥風月
(5月1日~8月31日)
水平社設立の中心的人物の一人、西光万吉は優れた画家でもある。関西美術院、太平洋画会研究所、日本美術院で学ぶ。同和教育の中では自らが被差別部落出身であることが露呈するのを恐れて絵の世界から遠ざかったとして、あたかも絵筆を折ったように演出するものの、実際は晩年まで作品を遺し続けた。仏教的な題材のものは、特にメッセージ性にとみ、優れる。板襖に描いた「醍醐の花見」など。

新庄町歴史民俗資料館
企画展 文武両道─新庄藩家老足立家の人々─
(4月24日~6月6日)
新庄藩主桑山氏の家老、足立家にまつわる資料を展示。展示史料の釈文だけでなく、口語訳したものも資料として用意。図録あり(30頁・500円)。

天理参考館
企画展 古代新羅の屋瓦
(4月7日~6月7日)
参考館所蔵の朝鮮半島・新羅地域出土の瓦を展示。宝相華文軒丸瓦、双龍文軒平瓦などはおもしろい。図録あり(14頁・400円)。

奈良国立博物館
特別展 法隆寺─日本仏教美術の黎明─
(4月24日~6月13日)
法隆寺伝来資料の一大展観。止利派の像造様式理解のため、中国・南北朝時代、韓国・三国時代の仏像も展示。金堂四天王像のうち多聞天像、御物・聖徳太子二王子像などなど。図録あり(208頁・1800円)。常設展示の法隆寺伝法堂の三尊像三組、お見逃しなく。

5月10日
彦根城博物館
テーマ展 大野出目家─井伊家伝来能面から─
(4月9日~5月11日)
井伊家伝来能面の中から、大野出目家をテーマにして、代々の面打作品を展観。桃山期の是閑の作品など26面。相生増(七代友水庸久作)は変わった面。常設展には室町~桃山頃の祖父(おおじ)面あり。

西明寺
十二神将像(鎌倉時代中期)、四天王像(平安時代後期(11世紀と12世紀))などなど。獅子・狛犬も古様で大きい。

5月16日
大阪市立美術館
 特別展 二百年遠忌記念 心の書 慈雲尊者
(4月20日~5月30日)
慈雲尊者の200年遠忌を記念して、その墨蹟を一堂に展観。「渇筆を大胆に使いながら筆圧がゆるむことがない」筆法が魅力。圧巻。関係寺院所蔵の仏像・仏画・工芸品も。高貴寺金銅三昧耶五鈷鈴(鎌倉時代・重文)、野中寺地蔵菩薩立像(平安時代・重文)など。図録あり(B4版(!)、176頁、3500円(!!))。

5月24日
正木美術館
 35周年記念展 第三部 悟道と祈り
(5月9日~5月30日)
正木美術館所蔵資料のうち、宗教文化に関わる多種の資料を展観。北周・保定四年(564)銘の仏三尊像は優品。春日社寺曼荼羅の正木美術館本が展示。画面上部は春日社景、下部は興福寺諸堂の仏像が表される。鎌倉末~南北朝。春日鹿曼荼羅も。図録は第二部展示の分があり(14頁・1000円)。

5月29日
和歌山市立博物館
博物館には何があるの?─新収蔵品を中心に─
(4月24日~5月30日)
和歌山市立博物館の近年における収集品の中から74件を、「物と美術の狭間で─工芸品─」「屏風絵の世界─絵画─」「景観を読む─絵図・地図─」「文字から人物や歴史を探る─書・古文書─」の四つの章に分けて展示。図録なし。

6月5日
和歌山県立近代美術館
小野竹喬展
(6月5日~7月11日)
岡山県・笠岡市立竹喬美術館所蔵のコレクションを展観。画業における数度の作風転換を丹念に追う。図録あり。

和歌山県立博物館(宣伝)
開館10周年記念特別展 きのくにの歴史と文化
第2期展示 宗教文化の諸相
(6月5日~7月4日)
人々の心を支えてきた信仰のかたちとそのありかたを、「高野山と熊野」「きのくにの仏教美術」「道成寺縁起」「大般若経の世界」の4つのトピックスからご覧頂きます。重文・円満寺十一面観音立像、重文・歓喜寺地蔵菩薩坐像ほか。

6月12日
滋賀県立琵琶湖文化館
小企画展示 肖像の世界
(6月8日~7月4日)
肖像画・肖像彫刻24件を展示。園城寺・智証大師坐像(平安時代・重文)、荘厳寺・空也上人立像(鎌倉時代・重文)、浅井長政像(天正2・県指定)など(リーフレット・A4版8頁)。常設展示の彫刻では長命寺・広目天立像(平安時代・10C初)など。小企画「透彫─技法に見る美意識─」では長命寺・金銅透彫華鬘(重文)など。この華鬘については、文化館の研究紀要20号(48頁・600円)に学芸員古川史隆さんの論文が掲載されています。

栗東歴史民俗博物館
特別陳列 安楽寺の文化財
(5月22日~6月20日)
守山市安楽寺の仏像・仏画ほかを展示。本尊千手観音立像は平安時代後期の等身大像(重文)。脇手の残存率もよい。南北朝~江戸の二十八部衆像(10躯)、誕生釈迦仏(平安時代)、釈迦涅槃図(南北朝~室町)など。リーフレット(A4・4頁)あり。

6月13日
淡島神社宝物館
人形展
雛流しで有名な和歌山市加太の淡島神社。宝物館には紀伊徳川家寄進の人形など。

6月14日
高野山霊宝館
企画展 重要文化財 高野版板木と摺本
(前期4月29日~7月13日 後期9月17日~12月23日)
平成12年に重要文化財に指定された高野版板木(金剛三昧院486枚・金剛峯寺勧学院5487枚・金剛峯寺奥の院5枚)の一部を展示し、その他版刷の様々なお経を展示。宋版や高麗版一切経ほか。

6月25日
徳島市立徳島城博物館
聖地高野山と四国の空と海─弘法大師空海の求めた世界─
(6月5日~6月27日)
実質的には徳島新聞創刊60周年を記念した展覧会。国宝・八大童子、善女竜王像、諸尊仏龕、聾瞽指帰ほか。版本高野大師行状図画は、板木が重文。千体弘法大師(室町時代)は珍しいもの。図録あり(94頁)。

徳島県立文学書道館
書道特別展 太宰府天満宮宝物展
(6月19日~7月25日)
太宰府天満宮所蔵の文化財のうち、墨跡や水墨画ほか、書道に関係する資料を主に展示。伝菅原道真所用の龍牙硯、渡唐天神像(室町時代)、近衛信伊筆渡唐天神像(桃山時代)、天満宮縁起画伝(江戸時代)、天満宮境内絵図(江戸時代)など。図録あり(800円・80頁)。

6月27日
泉屋博古館
特別展 金銅仏─東アジア仏教美術の精華─
(3月2日~6月30日)
中国・朝鮮半島の金銅仏を展観。後漢・五胡十六国から新羅まで。太和22年(498)金銅弥勒仏立像(重文・泉屋博古館)、北周・金銅菩薩立像(東京芸大)、白鶴美術館・五尊像押出仏など。隋・金銅楊柳観音像(泉屋博古館)は佳品。図録あり(60頁・1000円)。

7月10日
和歌山県立博物館(宣伝)
開館10周年記念特別展 きのくにの歴史と文化
第3期展示 見る・読む・歩く荘園
(7月10日~8月15日)
京都の都に近く、豊かな資源に恵まれた紀州は、早くから貴族や大寺社の領有する「荘園」が存在した地域でした。近年新しい視点から「荘園」の実態を見直す「荘園調査」が進展し、新たな資料の発見も相次いでいます。人々の生活の舞台としての「荘園」の実態を、歩いて発見した近年の調査の成果などから分かりやすく紹介します。

7月11日
奈良国立博物館
特別展 黄金の国・新羅─王陵の至宝─
(7月10日~8月29日)
韓国国立慶州博物館所蔵資料を中心に、新羅の王陵より出土した金製品を多数展示。照明コンセプトは普段の奈良博とは異なる。でもどこかで見た感じ。図録あり(164頁・1500円)。

特別陳列 金飾の古墳時代─副葬品にみる日韓交流の足跡─
(7月10日~8月29日)
上記展示にあわせ、日本国内で出土した古墳時代の金製品他を展示。資料に関連性を持たせていて、朝鮮半島との深い関わりを示そうとする試みは成功している。図録あり(23頁・500円)。

親と子のギャラリー 古地図を読みとく
(7月10日~8月29日)
恒例の親と子のギャラリー。古地図に描かれている、あるいは記されている情報から、歴史を読みとこうとする内容。普段展示されにくい資料だけに意味がある試み。東大寺山堺四至図は、江戸時代の写しでも、十分楽しい。図録あり(32頁・800円)。

春日大社宝物殿
祓の心を表す 春日の祭礼と宝物
(7月1日~8月29日)
「おはらい」に関わる資料と国宝・古神宝から武器武具類ほかを展示。パネルなども使って神事を詳しく解説。

7月14日
京都国立博物館
小特集 肖像彫刻
(6月29日~9月26日)
肖像彫刻の特集。最勝老人立像(金戒光明寺・鎌倉時代)、千観坐像(重文・愛宕念仏寺)ほか。江戸時代の仏師、初代清水隆慶の位牌は自作の自分の胸像が附属する。湛海の影武者仏師としてより、人形彫刻に優れた才能を持った人物として、江戸時代彫刻を語る上で見逃せない。名人だ。修理完成記念で高山寺の神鹿・馬(重文)も。たてがみが
復元された。

特別陳列 新収品展
(6月30日~8月1日)
新収蔵品を新館各展示室に分散して展示。伊藤若冲の石峰寺図は深草にあるゆかりの寺院。羅漢のデザイン化した描き方は現代的。というか漫画的。

7月18日
山口県立美術館
平成大修理完成記念 周防国分寺展─歴史と美術─
(6月25日~8月1日)
周防国分寺の宝物を中心に、山口県下の仏教美術関係資料が集められている。周防国分寺の四天王像(重文・平安初期)は圧巻。眼福。展示空間作りの演出具合はさすが美術館。小郡町・正福寺の平安時代初期観音菩薩立像は壇像風で普段は秘仏。装丁にこだわった図録あり(168頁・2000円)。どうぞお見逃しなく。

7月19日
福岡市美術館
東光院仏教美術室
(常設)
平安時代後期の仏像群を核とし、鎌倉・南北朝ほかの仏像がずらり。平安後期の十二神将像にまじった江戸時代の補作の像は、正面観では平安後期と見まごうばかりだが、側面観では造形が破綻。なるほど。

茶の湯と金工
(6月1日~7月19日)
松永耳庵のコレクションを、テーマを設けて展示。重文・線刻十一面観音鏡像は長承3年(1134)の施入銘あり。金銀鍍透彫華籠は神照寺旧蔵。リーフレットあり。

小田観音堂
平安時代前期~後期の千手観音・十一面観音・不空羂索観音像。千手観音立像は像高234.2㎝、量感あふれる優れた造形。すごい。

浮嶽神社
平安時代初期の木彫群と平安時代後期の阿弥陀・破損仏。如来形立像と地蔵菩薩立像に造像時期の若干の差を実感。量感と緊張感を体感。そして発汗。地蔵の着衣形式の理解が進んで、とても勉強になった。

7月20日
蟹満寺
用事のついでに、数年ぶりにちょっと立ち寄る。国宝・銅造釈迦如来坐像。先日からいいお像ばかり見ているなあ。院生に戻った気分。楽しい。

長岳寺
用事のついでにちょっと立ち寄る②。院生に戻った気分を引きずって、仁平元年(1151)阿弥陀三尊像拝観。初心に帰るのはいいことだ。いろいろ考える。

7月24日
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館
 特別陳列 世界遺産登録記念 大峯山寺の出土遺物
(7月10日~7月25日)
大峯山寺出土の金製小仏像2躯(平安時代前期と後期)、蔵王権現懸仏、古代・中世の銅銭などを展示。

速報展 大和を掘る22─2003年度発掘調査速報─
(7月17日~8月29日)
奈良県の2003年度の発掘成果を速報展示。さすが奈良は重要な遺跡が目白押し。唐古・鍵遺跡、尼寺廃寺、法輪寺シビ破片、平城京出土金属製人形など。巣山古墳の水鳥形埴輪は愛くるしい。図録あり(48頁・400円)。

7月25日
金峯山寺
本尊蔵王権現開帳
(7月1日~2005年6月30日)
金峯山寺本尊の三躯の蔵王権現像が、世界遺産登録を記念して特別開帳。中尊の像高7.4m。安土桃山時代の作で重要文化財。携わったのは下御門仏師。奈良仏師最後の光芒。

吉野山ビジターセンター
常設展
明治13年・松浦武四郎寄進の大鏡(直径1m強)など。松浦は北海道の名付け親。修験の行者だったのか。

7月26日
高野山霊宝館
世界遺産登録記念 高野浄土への憧れ
(前期7月20日~8月10日 後期8月11日~9月10日)
高野山上の文化財を「弘法大師空海の生涯と名宝」「高野浄土の名宝」の2章に分けて展示。前後期の主な展示替えは、前期応徳涅槃図・蓮華三昧院阿弥陀三尊像、後期船中湧現観音像・善女竜王像・阿弥陀聖衆来迎図(全て国宝)。図録あり(106頁・2500円)。

8月9日
大阪市立美術館
特別展 祈りの道─吉野・熊野・高野の名宝─
(8月10日~9月20日)
世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」に関連して、吉野・熊野・高野に関わる文化財を展示。目玉は、金峰山寺・蔵王権現像(重文・459㎝)、速玉大社の速玉大神・夫須美大神・家津美御子大神像(重文)、根津美術館・那智瀧図(国宝・8/20まで)など。展示件数307件だが、絵画作品を中心に前後期で展示替多数(前期8/29まで、後期8/ 31から)。和歌山の仏像もたくさん出陳。図録あり(360頁・2500円)。

8月11日
滋賀県立琵琶湖文化館
神々のかたち─彫刻と絵画─
(7月6日~9月5日)
神の姿を表した資料、9件を展示。竹田神社の重文・男神坐像2躯は小像ながら威相をみせる平安時代前期の像。その他、金勝寺・僧形八幡神像(平安後期)など。リーフレットあり。

京都国立博物館
特別展 神々の美の世界─京都の神道美術─
(8月10日~9月20日)
京都府下の神道美術に関する資料を集める。松尾大社・男神坐像(重文)などの慨知の文化財のほか、本展のために新たに調査され見出された新出資料も多い。地域に密着した活動の成果であり、重要な事業。図録あり(292頁・2700円)。

8月21日
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館
特別陳列 末永雅雄と森本六爾
(8月21日~9月19日)
奈良の考古学の礎を築いた二人の考古学者の回顧展。写真パネルと関係遺物、書籍・書簡など。去年は大阪府立弥生文化博物館で森本六爾、小林行雄と佐原真の展覧会があったが、美術史学者の回顧展は当分なさそう…。美術院の修復技師では、昨秋・鳥取県博で国米泰石、今秋は鹿児島市美で新納忠之介の回顧展。琵琶湖文化館の「フェノロサ・天心の見た近江」も要注目。リーフレットあり。

奈良文化財研究所飛鳥資料館
夏季企画展 長谷寺本堂の建築
(8月6日~8月31日)
昨年春に倒木によって破損した長谷寺本堂の修理中に奈文研が行った調査成果を公開。取り替えられた部材や棟札(重文附)などのほか、指図や関係文書。図録はないが、奈文研の調査報告書(198頁・2000円)がある。同本堂の建築史上の位置づけは一気に進展。

和歌山県立博物館(宣伝)
 開館10周年記念特別展 きのくにの歴史と文化─第4期 近世の芸術と学問─
 (8月21日~9月23日)
  江戸時代の和歌山では、紀伊徳川家の支配のもと、さまざまな芸術や学問が花開きました。それらの中から、祇園南海や長沢芦雪の絵画、本居宣長をはじめとする国学関係の資料、江戸時代後期に和歌山で焼かれた陶磁器などを中心に、江戸時代の文化を紹介します。

8月22日
大阪府立近つ飛鳥博物館
夏季企画展 旬夏秀陶 関西編
(7月27日~8月29日)
明治8年に設けられた大阪府立大阪博物場で収集された江戸時代の陶磁器は、現在府教委の保管になる。そのコレクションから関西地方各地の窯別に優品を展示。古清水色絵雉子香炉(18C)など。図録あり(42頁・500円)。

8月26日
和歌山市立博物館
紀州徳川家と豪商三井家─三井家伝来の茶道具を中心に─
(7月24日~8月29日)
三井家(越後屋)は紀伊藩領松阪を出自とする豪商で、紀伊徳川家とは密接な関係にあった。三井文庫に所蔵される紀伊徳川家より拝領の茶道具を中心に、楽焼の窯などの出土資料や関係史料を展示。キャプションにひと工夫あり。
図録あり(800円)。

8月29日
テクスピアホール(泉大津市)
みやびとひかり リサイタル能乃会
舞囃子は砧(シテ片山九郎右衛門)。能は石橋(しゃっきょう)、師資十二段之式。シテは橋本雅夫・光史。二匹の獅子は文殊菩薩の眷属。アイのセガレ仙人は茂山逸平、使用面は少し変わった祖父(おおじ)。いいお面。

9月5日
大阪市立美術館
特別展 祈りの道─吉野・熊野・高野の名宝─
(8月10日~9月20日)
再訪(前回8月9日)。絵画作品の展示替後、注目は慈尊院の絹本著色弥勒仏像(平安時代後期・重文)。初めて見た。世界遺産登録さまさま。でも、あまりに人が多いので早々に退散。入場制限でした。うーん。

大阪歴史博物館
 特別展 生人形と松本喜三郎展
(8月25日~10月4日)
幕末から近代にかけて、「見世物」として作られた生人形(いきにんぎょう)に関する、初めての展覧会。スミソニアン博物館の松本喜三郎作品など、海外に残された作品も集成。必見。最高。図録あり(256頁・2000円)。

9月11日
和歌山県立近代美術館
ピノッキオ その誕生から現代まで
(7月18日~9月23日)
イタリアの童話ピノッキオの成立と展開、日本での翻訳本などを紹介。佐藤春夫が翻訳していたりと、和歌山とのつながりが大きいのは意外。図録あり。

9月19日
藤田美術館
開館50周年記念展 仏教絵画と彫刻─うつくしいほとけたち─
(9月18日~12月5日)
2週間ぶりの休みだ。藤田美術館所蔵の仏教絵画・彫刻の優品を惜しげもなくどーんと展観。快慶・行快銘のある地蔵菩薩像や、快慶風が顕著な阿弥陀如来立像、板彫五大尊曼荼羅(平安時代)は檀木を用いた印仏作法用のもの。国宝・両部大経感得図(永久寺伝来)や国宝・玄奘三蔵絵、国宝・仏功徳蒔絵経箱のほか、五鈷四天王鈴は唐時代。空襲で蔵が燃え残った奇跡に感謝。図録はないが、館蔵品選集はあり。3万円なり。買えません。

大阪市立東洋陶磁美術館
日韓国際交流特別企画展 高麗青磁の誕生―初期高麗青磁とその展開―
(9月18日~12月12日)
韓国の湖巌美術館、海剛陶磁美術館、康津青磁資料博物館所蔵の高麗青磁窯跡出土の資料を中心に、東洋陶磁美術館所蔵の高麗青磁などを展示。翡色青磁や象嵌青磁をクローズアップ。図録あり(124頁、1800円)。駐車場探しでうろうろ。天満警察署の近くの100円駐車場が安くて便利だと分かった。

9月20日
兵庫県立歴史博物館
企画展 木のほとけ 絹のほとけ─仏像・仏画の再発見─
(9月4日~10月3日)
兵庫県博所蔵・寄託(おそらく)の仏像・仏画を展観。嘉応2年(1170)銘の阿弥陀如来立像は玉眼嵌入。竹野町桑野本区所蔵の行道面は鎌倉前期の優品を含む。館蔵品の重文・仏涅槃図(鎌倉時代)、楽音寺仏涅槃図(鎌倉・県指定)のほか、慶安寺の釈迦十六善神像は三幅対になった珍しいもので、玄奘は梵筺を持った図像。図録なし。

姫路市書写の里美術工芸館
特別展 書写山円教寺に伝わる美
(9月18日~10月24日)
 円教寺所蔵資料を膝下の美術館で展示。性空上人像は、画像(ちょっと異相にあらわされたやつ)の特徴と確かに近い。上人没後の11世紀初頭の製作という解説は説得力有り。ただし衣紋の表現などは古様。五大明王像(平安時代・11世紀)の存在は知らなかった。図像的にもいろいろと想像をかき立てる作例。図録なし。

龍野市立歴史文化史料館
特別展 揖保郡(いひほのこおり)─播磨国揖保郡の文化財─
(9月11日~10月24日)
旧揖保郡内の文化財を展観。仏像では斑鳩寺の日光菩薩・十二神将像(重文・鎌倉)、見性寺毘沙門天立像(重文・平安後期)など。絵画はすごい。斑鳩寺の聖徳太子勝鬘経講讃図(重文・鎌倉)、紺紙金泥釈迦三尊十六羅漢像(平安後期)、大角寺の釈迦三尊像(重文・鎌倉)。見応えあり。図録あり(70頁・1000円)。

10月3日
福井県立若狭歴史民俗資料館
特別展 王の舞を見に行こう!─郷土の祭りと芸能文化の理解のために─
(10月2日~11月7日)
若狭地方に集中的に伝えられる「王の舞」は鼻高の王舞面をつけて舞い、災厄やケガレを払う神事。現在も王の舞が行われている16ヶ所分の面や装束等のほか、他地域の王の舞関連資料も収集。奈良・手向山八幡宮の王舞面(重文)など。いわゆる鼻高面について考える上で、王舞の理解が進んだのは収穫。図録あり(76頁・1500円)。

飯盛寺
茅葺の本堂は延徳元年(1489)の建立で重文。中門の二天像はよく見えないが、改造多いも平安後期か。東寺食堂様だ。大師堂をのぞくと平安後期の菩薩立像や不動明王立像が並ぶ。いい雰囲気のお寺。

10月9日
和歌山県立博物館(宣伝)
 世界遺産登録記念・弘法大師入唐1200年記念特別展
空海と高野山
(前期10月9日~10月30日 後期11月3日~11月23日)
  弘法大師空海(774~835)は、延暦23年(804)に密教を求めて中国・唐に渡り、帰国後の弘仁7年(816)に高野山を真言密教の拠点として定めました。その後、現在に至るまで、高野山は人びとの厚い信仰のもと、密教文化をはじめとして、多様な仏教美術が集積し、守り伝えられてきました。このたびの特別展は、高野山を含む地域が、「紀伊山地の霊場と参詣道」として、ユネスコの世界遺産に登録されることを記念して、かつてない規模で高野山上の至宝を一堂に展示し、その全貌を紹介するものです。国宝21件、重文96件を含む、140件の至宝をこの機会に是非ご覧下さい。なお、前後期で絵画作品を中心に大きく展示替えをいたしますので、和歌山県博HPの出陳リストをご参照下さい。和歌山県立博物館HP。八大童子人気投票も要チェック!

10月15日
大和文華館
 特別展 普賢菩薩の絵画─美しきほとけへの祈り─
(10月9日~11月14日)
  普賢菩薩をテーマに、絵画や法華経、関連資料を集める。経典では中尊寺経(金剛峯寺・国宝)や浅草寺経(浅草寺・国宝)、慈光寺経(慈光寺・国宝)など。滋賀・百済寺の観普賢経の見返し絵はキラキラ。松尾寺・普賢延命像(国宝)など絵画も優品多し。安楽寿院・普賢菩薩像は宋画写し。版本のような謹直な線描。唐風だ。展示替えがあるので、絵画好きの方は前後期二回行く必要があるでしょう(後期10月26日~)。図録あり(124頁・2100円)。

奈良国立博物館
平常展
今日の本題、仏教美術資料センターで文献収集。ついでに本館一周。向かい合って立つ快慶作東大寺地蔵菩薩立像(1200年前後)と栄快作長命寺地蔵菩薩立像(1254年)をあらためて見ていると、50年の差は大きいなとしみじみ思う。13世紀前半、なんて時期設定に意味はないということ(なくもないか…後日記す)。

10月21日
佐川美術館
 特別展 国宝中尊寺展─奥州藤原氏三代の黄金文化と義経の東下り─
(10月9日~11月28日)
  中尊寺の資料を中心に、平泉地域の出土資料や藤原秀衡奉納伝承のある資料、義経ゆかりの資料などを集め
る。金色堂諸尊のうち、地蔵2躯、脇侍菩薩1躯、二天1躯が出陳。丈六薬師など。なんといっても岐阜県白鳥町・石徹白の銅造虚空蔵菩薩坐像。側面も鑑賞できる。優れた造形(公開は11月7日まで)。図録あり(168頁・2000円)。

滋賀県立安土城考古博物館
特別展 戦国・安土桃山の造像─仏像彫刻・懸仏編─
(10月9日~11月14日)
戦国時代から中近世移行期の造像活動を、仏像と懸仏から展観する。当該時期の彫刻作品を積極的に評価する指標が求められている中で価値ある展示。金剛寺虚空蔵菩薩坐像の肌面のきれいさは秀逸。同時期の七條仏所の作品と比べても、宿院仏師の作例は光るモノがあると実感。この時期の研究はもっと堂々となされてしかるべきだと、室町時代の仏師が卒論テーマの私は思うのです…。図録あり(100頁・1500円)。

銅鐸博物館(野洲市歴史民俗博物館)
野洲市誕生記念特別展 野洲の歴史と文化
(10月16日~11月21日)
野洲市誕生を記念して、市域の文化財を一堂に集める。来迎寺・聖観音立像は平安初期、9世紀の作例。重量感がありながら真っ直ぐ芯が通ったような立ち姿に鈍重さは無く、裙裾が上がって軽快。スピード感のある衣紋や粘りのある衣紋にはリズムがある。ガツーンとやられた。まいった。蓮長寺・十一面観音立像は平安時代前期、腰をうねうねさせてます。絵画では法蔵寺・如意輪観音像。鎌倉初期の大幅。これもすごいや。図録あり(42頁・1200円)。

栗東歴史民俗博物館
企画展 近江の神道美術
(10月17日~11月23日)
滋賀県の神道美術をテーマに神像彫刻、絵画、仮面、狛犬、工芸資料を全館規模で展示。よくこれだけ集めることができたものと、脱帽。狛犬は18セットも。小槻大社の神像2躯は宮殿も出陳。南菩提寺区の天文20年(1551)銘鬼面は独創的でいて意匠化した表現が不思議なもの。見られてうれしい。群立する神像の数々、見逃したらもったいない。再訪を期す。図録あり(104頁・1000円)。

10月26日
神奈川県立歴史博物館
 特別展 湘南の古刹 神武寺の遺宝
(10月9日~11月14日)
  神武寺所蔵の文化財を展観。十一面観音坐像は鎌倉末~南北朝期の優品。その他中世の仏像も多い。鶴岡八幡宮の弁才天坐像(重文)は文永3年(1266)の作。本物の服を着る像。頭部だけでも十分造形の優れていることがわかる。図録あり(108頁・1200円)。

神奈川県立金沢文庫
特別展 龍華寺の天平仏─その謎にせまる─
(10月7日~12月5日)
龍華寺で近年発見され、復元修理が行われた天平時代の乾漆仏を中心に、龍華寺の文化財を展観。造形の類似から、兵庫・金蔵寺の天平仏の脇侍仏であったことは確実。その他、興福寺旧蔵・十大弟子像の一体(個人蔵)や乾漆仏断片も展示。おもしろいこと考えますね。鎌倉時代の幡頭がずらり。その他中世の仏像・仏画・工芸など多数。図録あり(64頁・1200円)。

10月27日
東京芸術大学大学美術館
 特別展 興福寺国宝展
(9月18日~11月3日)
  興福寺中金堂再建事業に伴う、標記巡回展の第一会場。鎌倉復興期の彫刻の優品がたっぷり。無著・世親像、うう、すごい。でも彩色などはもろそう。担当者は冷や汗もんでしょう。当方は二日酔いで冷や汗ですが。お客さんがあまりに多いので、地下はざっと見てスルー。3階で時間を費やす。中金堂四天王、康慶工房を構成する仏師の手の違いをいかに見極めるか。広目天が一番うまい。大阪でまた見よう。図録あり(264頁・2300円)。

東京国立博物館
特別展 中国国宝展
(9月28日~11月28日)
優品勢揃い。仏教美術、全然知らなかったものが多い(ただの勉強不足でしょうが)。西安市静法寺出土の鉄造弥勒如来像は盛唐期の制作で像高145.5㎝の等身大。本来は鉄の上に乾漆盛り上げて成形していたとのことで、二度びっくり。山東省・龍興寺址出土の仏像群は北京で初めて展示されたとき、ひいこらいいながら見にいった。なつかしい。国際美術館の時に、もう一回いこう。図録あり(280頁・2600円?)

茨城県立歴史館
特別展 茨城の仏教遺宝─みほとけの情景とまなざし─
(10月16日~11月28日)
近年、県の事業で積極的に調査がなされている茨城県内の仏教美術を集成。四臂如意輪観音立像(平安時代後期)は類例のほとんどないもの。水府村・中染区阿弥陀堂の鉄造阿弥陀如来立像の木型が、大洗町・西光院の阿弥陀如来立像だったことが判明。並べて展示。すごい。西蓮寺の十二神将像(鎌倉時代)も優品。なんといっても万福寺の阿弥陀三尊像。歯吹・仏足文の有名な像ですが、脇侍も含めて手先が銅製。わずかにのぞく歯も異材使用。監視のお姉さんが懐中電灯使うなと怒るので、こそこそ見る。あやしい?。図録あり(148頁・900円)。安い。

11月4日
和歌山県立近代美術館
チャールズ & レイ・イームズ 創造の遺産
(11月2日~12月26日)
チャールズとレイのイームズ夫妻がデザインした家具や映像作品などを展示。京都国立近美では剣持勇展。見ている限りはデザインって特定の作家がリードするもよう。確かに身の回りのあちこちにイームズの焼き直しデザインが(子どもの頃はもっと多かったような気がする)。でも作家個人が表に出てこないものも多そう。写真も、名もなき人が撮影したものはなかなか浮かばれない。作品を見ているようで、結局作家を見ていると言うことか。図録あり(3000円)。

11月5日
熊本県立美術館
第24回熊本の美術展 天部の美─ご利益と護のほとけたち─
(10月22日~11月28日)
九州に所在する仏像の中から、天部にスポットを当てて集成。一部畿内の作例を混ぜるのは以前同館で開催した平安彫刻展でも同様でした。佐賀県・円通寺の持国天・多聞天像は永仁2年(1294)、大仏師湛幸・小仏師湛誉。運慶4代目の頑張り具合をしっかり確認。西国湛派という用語を知る。福岡県・善導寺の毘沙門天像は保安元年(1120)、もみあげにくるくるっと巻いた形がある。奈良仏師か?。その他大きな仏像がたんまり。図録あり(136頁・2000円)、リーフレットはマンガで天部の解説。地元大学の学生さんが製作協力のよう。素晴らしい取り組みです。

鹿児島県歴史資料センター黎明館
企画展 鹿児島の人形の民俗
(9月7日~11月28日)
同館所蔵の川邊コレクションの人形(県指定)を、テーマを分けて展示。素朴な人形。常設展示、すごく広い。

鹿児島市立美術館
特別展 没後50年 新納忠之介展─仏像修復にかけた生涯─
(10月5日~11月7日)
なんとか会期に間に合った。日本美術院で仏像の修理にあたり、現在の文化財修理の礎をきずいた新納忠之介の回顧展。新納の美術学校時代の制作物から、九州地方で修理にたずさわった仏像など、幅広く集成。なんといっても、佐賀県・東妙寺薬師如来坐像(重文)。これ1体の鑑賞に2時間費やす。その他主な展示資料は次の通り。福岡県・千手観音保存協会千手観音立像、南淋寺薬師如来坐像、西林阿弥陀如来坐像、八幡古表神社神功皇后像、観世音寺阿弥陀如来立像・大黒天立像、佐賀県・東光寺薬師如来坐像、高城寺円鑑禅師坐像、熊本県・福城寺釈迦如来立像(以上全て重文)。図録あり(155頁・2000円)。ちなみに今日のルートは伊丹空港─熊本空港─熊本駅─鹿児島中央駅─鹿児島空港─関西国際空港。九州新幹線の一部開通でこんな芸当も可能に。

11月11日
滋賀県立琵琶湖文化館
特別展 フェノロサ・天心の見た近江─明治21年臨時全国宝物調査から─
(10月9日~11月14日)
園城寺法明院とフェノロサ・岡倉天心との深いつながりをふまえて、滋賀県内で行われた明治21年臨時全国宝物調査にスポットをあてて関係史料を集成。優品ばかりで見応えあり。個人的な興味では草津市・芦浦観音寺の阿弥陀如来立像。仏足文を有した作例。見られてよかった。いろいろ考える(答えなど出ない…)。斬新な切り口の展覧会でいろいろ触発される。近代期の文化財保護政策の具体的事例を押さえていく作業、続けなければ。図録あり(136頁・1500)。

大津市立歴史博物館
天台宗開宗1200年記念 回峰行と聖地葛川─比叡山 明王院の寺宝─
(10月6日~11月14日)
葛川明王院の歴史と文化財を、千日回峰行や比叡山との関わりを軸として、周辺地域の関連資料なども集めて展観。重文・葛川明王院文書や参籠札などをずらりと展示。仏像では比良天満宮神将形立像や三千院金色不動明王立像などは優れたもの。なぜ未指定なの?という感じ。上品寺菩薩立像は善円風のもの。図録あり(96頁・800円)。安い。

栗東歴史民俗博物館
企画展 近江の神道美術
(10月17日~11月23日)
再訪(前回10月21日)。滋賀県の神道美術をテーマに神像彫刻、絵画、仮面、狛犬、工芸資料を全館規模で展示。小槻大社の神像二躯と、日牟礼八幡神社の神像群、金勝寺の未指定の僧形神坐像を特に鑑賞。先に八幡神の論文を書いた時は金勝寺の県指定のほうの僧形像と比較したが、未指定の僧形坐像の方が造形的には近い。11世紀彫刻の様式論は、他人を説得するのがムズカシイ。図録あり(104頁・1000円)。

11月12日
平等院
美術史学会・鳳凰堂阿弥陀如来像見学会
 国宝阿弥陀如来坐像光背特別公開(9月24日~12月5日)
境内の工房で修理中の阿弥陀如来坐像の見学。とにかく目に焼き付ける。像内一面の赤色系顔料、もう二度と見ることはないだろう。結縁した気分。こういう機会を作っていただいたすべての関係者に感謝。望むらくは、修理報告書が入手しやすい形で発行されますように。多くの人が情報を共有するためにも。光背、案外複雑な構造。頭光・身光の蓮肉部等も別材製。

八幡市立松花堂美術館
徳川家ゆかりの名刹 八幡・正法寺の名宝展─現代に息づく仏たち─
(10月9日~11月23日)
石清水八幡宮の膝下、正法寺所蔵の文化財を展示。仏像では平安時代前期の阿弥陀如来立像、南北朝期の不動明王立像。高麗仏画の名品、重文・如来像、通称赤釈迦にうなる。男性的な面相部、赤・緑の鮮やかな色彩、金泥の団花文の精緻さ、衣紋にはキリカネのように謹直な描線の金泥をのせ、隈を施す。ほぼ等身大の大きさも相まって迫力満点。図録あり。

奈良国立博物館
第56回 正倉院展
(10月30日~11月15日)
楓蘇芳染螺鈿槽琵琶が目玉。胴中央には山水渓谷と騎象奏楽図の密陀絵。山水図は奥行きがあってスケールが大きい。列をつくる群鳥も叙情満点。伎楽面・仏像型をしっかり鑑賞。緑地彩絵箱、色遣いの妙。図録あり(144頁・1200円)。

11月18日
大阪市立美術館
特別展 世紀の祭典 万国博覧会の美術
(10月5日~11月28日)
近代初頭、日本の威信をかけてパリやシカゴなどの万博に出陳された数々の工芸資料を展観。過剰とも言える装飾を施した陶器や鋳造製品、蒔絵や螺鈿で装飾した漆製品など、展示資料は膨大な量。高村光雲・鈴木長吉・宮川香山・浅井忠が印象に残る。第Ⅱ部の西洋美術(マネやクールベ、アルフォンス・ミュシャやガレ、ロダンなど)の部分、???となりましたが図録の次の文を見て納得。P174冒頭「この展覧会の第1部と第2部はそれぞれ別個に企画され、さまざまな経緯を経てひとつの展覧会となった」。別個です。図録あり(360頁・2500円)。

11月21日
花園村・遍照寺
花園の仏の舞
和歌山県指定文化財の民俗芸能、「花園の仏の舞」が20年ぶりに奉納、上演。本来は61年に一度だけ行うという奇跡のような舞であるが、今回は保存・継承の意味合いが強い。内容は法華経提婆達多品の龍女成仏の話がベースではあるが、枠組みだけで、迷いの象徴としての鬼を教導する内容がメイン。鬼の動きは激しいが、当初からのものかどうかは不明。ほとんど上演されていないので研究があまり進んでおらず、どこが古くてどこが新しいのか分からないことも多いが、和歌山の仮面芸能について考える上で得るものは多かった。今年見られたなんて、運がいい。次の上演は、一応20年後だそうです。…毎年やって下さい。

11月22日
高浜町郷土資料館
特別展 企画展 正楽寺展─若狭高浜の密教文化─
(10月17日~11月23日)
福井県高浜町・正楽寺の文化財を一堂に展観。本堂安置の平安時代の仏像23躯や、本堂屋根裏から発見された破損仏群などなど。本尊観音菩薩立像は10C後半の等身大の像。写真の印象とは違って、優れた造形。釈迦如来坐像や地蔵菩薩立像が同じ時期。地天女の手のひらに立った神将形立像が複数あり、少なくとも対の像が2セット。兜跋毘沙門天と捉えるのはなお検討が必要か。破損仏の中で最も大きい円頂相の坐像は、僧形で胸や腹のくくり線を見せながら、内衣を付けて偏担右肩に衣をまとう。類例は無いのでは。10~11C頃。僧形神像か。図録あり(32頁・1000円)。となりの大飯町でも仏像展やっているとのこと(大飯町立郷土史料館開館10周年記念企画展「おおい仏像展─佐分利谷の秘仏を中心に─」、11月20日~12月12日)。あぁ今日は月曜日だ。断念。今年の秋の展覧会巡りはこれで打ち止
め。お疲れ様でした。

12月7日
和歌山県立博物館(宣伝)
特集展示 歓喜寺の文化財
(12月7日~12月26日)
歓喜寺が所在するかつての吉原村は、鎌倉時代の高僧・明恵(みょうえ)の生誕地です。明恵の弟子喜海建立の歓喜寺に所蔵される地蔵菩薩坐像(重文・9世紀)、阿弥陀如来坐像(重文・14世紀)をはじめとして、彫刻・工芸・古文書などの多くの初公開資料を一堂に展示します。図録なし。

12月12日
奈良国立博物館
大和の神々と美術 談山神社の名宝
(12月11日~1月23日)
奈良県桜井市・談山神社所蔵の文化財を中心に、明治期に流出した資料などを交えて展観。藤原鎌足像、いろいろ悩む。檀像・十一面観音立像(重文)、東博にしょっちゅうでているとは言え、奈良で見られることがうれしい。能面や南都絵所・芝座の絵師による作例もチェック。経典の優品など、所蔵資料はバラエティーに富む。図録あり(80頁、1000円)。

特別陳列 法隆寺救世観音像旧厨子
(12月11日~1月23日)
再発見された夢殿の厨子部材を組み上げ展示。花紋を描いた旧天井板(奈良時代後期)など。厨子は製作後、平安、鎌倉、江戸と改造を受けており、その変遷を示す。リーフレットあり。

12月20日
春日大社宝物殿
特別公開 春日の刀剣─日本人の共生の心を表す─
(9月1日~12月28日)
春日大社所蔵の刀剣の優品をずらり。古神宝関係の平安刀(国宝)は見応え有り。毛抜形太刀、刀身と拵が別々だと、ああ、毛抜形って単なる装飾なんだと認識(展示品に関しては)。金銅柏文兵庫鎖太刀(重文)の拵え、でかい。柏文の飾りも精緻な金工品。

12月21日
橿原市千塚資料館
企画展 保存科学からみた植山古墳─出土遺物が語る古代の技術─
(11月20日~12月26日)
橿原市の植山古墳出土の副葬品を保存する際に得られたデータや情報を速報展示。何年か前からずっと続けられている住宅地開発で、周辺の地形はおどろくほど変わってしまったけど、古墳は史跡指定されてなんとか残った。見瀬円山古墳など周辺にも超重要な古墳があるところ。橿原っていうより明日香村の端ですな。展示資料はわずかですが、細かな分析の結果が提示され得られる情報は多い。馬具の歩揺付飾金具の構造や、実際に固定用の糸が残存している資料など。ミニミニだけど、ああっ、よく残っていたなあと素直に思える。手作りリーフレットあり。

水平社博物館
差別に生きた女性たち
(12月10日~3月27日)
人権問題を扱う博物館。水平社発祥の地です。パネルを多数作って、特に近現代において女性が差別されてきた実態を、社会構造の中で解説。伝統や、差別と区別は違うといった言質で温存された差別構造については、きっと崩されていくでしょう。一部、土俵に女性を上げない相撲協会批判があるのは、多分元ネタが大阪人権博物館だからでしょう。図録なし。

1月8日
和歌山県立博物館(宣伝)
コーナー展 きのくにを祝う─新春と吉祥の造形─」
(1月8日~2月6日)
この展示では、新春という一年でもっともおめでたさを実感する時期に合わせて、収蔵品の中から、吉祥にまつわる資料をご紹介します。昔の人々が、どのようなものにおめでたさを感じていたのかを追体験していただける内容となっています。図録なし。なお、和歌山県立博物館のウェブサイトのデザインを大幅に変更致しました。手作りでお粗末なものですが、新装なったサイトを一度覗いてやって下さいませ【和歌山県立博物館新ウェブサイト】。

1月9日
京都国立博物館
新春特集陳列 仏像と写真 (1月2日~3月27日)
新春特集陳列 十二天画像と山水屏風─平安の雅─ (1月2日~2月13日)
新春特集陳列 高台寺蒔絵と南蛮漆器 (1月2日~2月20日)
常設としてさらっと出すのも贅沢でいいけど、展示にテーマとタイトルをつけたほうが宣伝はやりやすいはずなので、特集陳列として、かつ三本重ねるのはうまい。「仏像と写真」はモノクロームの写真と仏像を並べて、見比べる趣向。図録あり(『BEST OF ART NO.1 仏像と写真』1200円)。絵画では釈迦金棺出現図(国宝)に見入る。応徳涅槃の記憶も新しい中だったので比較しながら。天文年間の蒔絵絵馬、おもしろい。

1月16日
奈良国立博物館
台風被災復興支援 厳島神社国宝展
(1月2日~2月13日)
国宝・平家納経を目玉として、厳島神社伝来の文化財を展示。平家納経33巻は頻繁に展示替えがありますので、全巻見る場合は奈良と東京の全期間中、9回行く必要があります。ま、図録(288頁・2500円)で楽しみましょう。諸尊仏龕、舞楽面、能面を鑑賞。紀年銘を有した翁面2面が勉強になる。提婆達多品の出ている間(1/18~1/30)にもう一度行くか…。常設では南明寺僧形坐像と現光寺十一面観音坐像がお目見え。現光寺像は鎌倉初期の慶派作例。

奈良県立万葉文化館
日本画二代─美の伝承─ 中庭煖華・隆晴展
(1月6日~3月13日)
中庭煖華は法隆寺金堂壁画の模写事業に参加。それ以後金堂壁画や諸尊を題材とした作品を発表。モチーフとしての仏像・仏画は、40代後半の「蛍光灯」が壁画模写作業場スケッチ風で一歩引いているが、60代になって「釈迦三尊」(斑鳩町役場蔵)など主たるテーマとなる。リーフレット(20頁)あり。

1月24日
貝塚市郷土資料展示室
特別展 地蔵堂丸山古墳と大阪の前期古墳
(1月15日~3月19日)
貝塚市内の前方後円墳・地蔵堂丸山古墳(全長70m、4c後半)の発掘調査による知見と周辺遺跡の情報を元に、当該地域における古墳時代頃の人々の動きを類推する内容。国史跡指定(S31)の際は原型をよく留めていることが指定理由だったようだが、実は後方部は近~現代の盛土で、墳丘面は全く残ってないとのこと。へえ。図録あり(24頁、300円)。

1月29日
四天王寺宝物館
四天王寺新春名宝展─聖徳太子信仰を中心に─
(1月1日~2月6日)
国宝・掛守など。阿弥陀如来坐像及び両脇侍像(重文・平安初期)をじっくり。中尊、彫刻空間の大きさに優れる。脇侍も9世紀。従来から一具性は否定されているが、制作時期は極端に違わない。別々の像が大きさぴったりでこうもうまく組み合うもんだろうか。

国立国際美術館
中国国宝展
(1月18日~3月27日)
万博公園から中之島に移転した国立国際美術館に初めて訪れる。外観は斬新。中国国宝展は再訪。四川省万仏寺址出土の如来坐像の台座、華瓶から茎がでて蓮華が咲いている。敷茄子の原型だ。この館はエスカレーターが故障したら大変。

2月7日
市立長浜城歴史博物館
 特別展 湖北の山岳信仰─湖北人の神と仏─
(2月5日~3月13日)
湖北に散在する霊山と、そこで育まれた信仰のかたちを、仏像等の資料から展観。菅山寺の十一面観音立像は、奈良時代末~平安時代初期の、木心乾漆像の新出作例。注目。庵寺観音講の大日如来坐像は、異国風の顕著な9世 紀の像。伊吹町・総持寺の天部形立像は10~11Cの等身大像。個性的な風貌と表現。その他鶏足寺の十所権現像など見所多い。慶長10年(1605)銘の伊夫岐神社・獅子頭は井関次郎左衛門尉作。面打井関家は、近世以前では活動の幅が広い。地域の歴史を幅広い資料から捉えようとする展示手法は好感・共感。図録あり(136頁・1800円)。

2月12日
下関市立考古博物館
 常設展
弥生時代~古墳時代の複合遺跡、史跡・綾羅木郷遺跡に隣接して建つ考古博物館。ここは鋳物の砂の採集場所で、遺跡保存を巡って権利者と行政が激突したところ。最後はブルドーザー約10台が深夜に強行突破して遺跡の一部を破壊してしまうという最悪の状況だったが、研究者や行政の人間がブルドーザーに立ちふさがって被害を食い止めた。遺跡破壊の直後に史跡に緊急指定。所変わって和歌山県では、中世遺跡として全国屈指の規模と内容を誇る根来寺遺跡が、地元岩出町の暴走で次々に破壊されています。付近の景観も惨憺たる有様。つくづく思うのは、民間が遺跡破壊をした場合は迅速に歯止めをかける方法があっても、地方自治体が破壊の主体者だった場合、首長が変わらない限りやりたい放題だということ。おなじ図式は全国にある。「歴史」を失うことの怖さに鈍感なのは、為政者に歴史観がないからで、幼稚なことだ。根来寺遺跡保存運動についてはこちらのサイト(櫟庵)をご覧下さい。『下関の文化財』を購入(118頁・2300円)。

和歌山県立博物館(宣伝)
コーナー展 むかしの絵はがき(紀中編)─喜多村進コレクション─
(2月12日~3月13日)
この展示では、和歌山県立博物館に寄託の絵はがき(喜多村進コレクション)のなかから、紀中地方の景観を撮影した絵はがきと現在の景観、海南市から田辺市にかけての地域に関わる関連資料を展示し、紀中地域が歩んできた歴史を振り返ります。

2月13日
山口県立萩美術館
 シリーズ山東文物5 小さな御仏たち展
(12月11日~3月13日)
山東省・博興県龍華寺址出土の小金銅仏73件を展示。孔昭俤造弥勒交脚像(河清3年(564)、展示番号34)は光背の天人が大型で全て残る。緻密な構成。薛明陵造菩薩立像(天保5年(554)、展示番号33)、仏倚坐像(展示番号52)など優品多い。ああ、仏教美術の勉強は、地平が果てしなく広がっている。子連れ・老人連れだったので、長居できずに後ろ髪引かれて退館。図録あり(88頁・1500円)。

三隅町立香月美術館
<私の>花展
(2月5日~5月29日)
シベリヤ抑留経験を画題とした「シベリヤ・シリーズ」が著名な香月泰男。常設展示にはシベリヤ・シリーズの「神農」など。重たいテーマにふさわしい画風。それ以前の作品も展示されているが、描写方法が飛躍して変化している。ここの展示のことではなく一般論として、来館者が作者と社会的・歴史的なコンテクストを共有するために、展示解説文は必要と思う。スポーツ観戦も、ルールを知っているから楽しいのであって、知らないと選手がかっこいい・きれいで終わるか、興味さえ持てないかである。伝えることは迎合ではなく使命だ。

2月26日
泉屋博古館分館&大倉集古館
 新春アートウォーキング2005 The 能
(1月2日~3月13日)
近接して建つ両館所蔵の能関係資料を取り合わせて、二つの会場で一つの展示を行う画期的な事業。どちも財団系コレクションが母体で、コレクションの種類や質、収集時期に似たところを含むからこそできる。いいアイデア。仮面の製作時期は上げ気味。ところで、能資料の展示は、どうしても来館者が能鑑賞の経験があることを前提としている。たとえば、バットとボールとグローブを見て野球をイメージさせる展示といえようか。動く映像があると、なおよかったというところ。図録あり(24頁・400円)。

東京国立博物館
国宝 鑑真和上像と廬舎那仏展
(1月12日~3月6日)
すごい人数のお客さん。廬舎那仏と梵天・帝釈天・四天王は露出展示で、周囲から見渡せるのはよい。ただ、おしよせる群衆・自由な導線・像周辺の緩衝部分の小ささ。係の人も近寄れない。怖くて、いたたまれなくなって退場。図録あり (2400円)。

親と子のギャラリー 仏像のひみつ 第2部 仏像4つのひみつ
(1月12日~3月6日)
仏像を、種類、素材や製作技法、表現の変遷、納入品や銘文の4つにトピックスをわけて、分かりやすく解説。ここでの理解をもとに、東博内の他の仏像の鑑賞も勧めていて、うまくリンクさせている。会場にやや制約を受けていたが、こういう試みは重要。考古資料でもやってほしい。

特別展 踊るサテュロス
(2月19日~3月13日)
表慶館で展示。サテュロス像の魅力と、その展示環境のすばらしさで、別世界のよう。でも、さわってみるサテュロスの模型は、なんで4つも5つもあるのだろう。図録あり(1000円)。

2月28日
春日大社宝物殿
日本人の共生の心をあらわす 絵巻・屏風・春日曼荼羅
(1月1日~3月29日)
仏教美術では春日曼荼羅(南北朝期)など。櫟屋絵師作品の地蔵菩薩像や南都絵所座(芝座系)の絵馬も展示。板絵牛頭天王曼荼羅(平安時代後期)の裏面には対の獅子の絵。

3月5日
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館
 速報展 二光寺廃寺の磚仏
(3月5日~3月27日)
法事の帰りに滑り込む。圃場整備に伴って発掘された標題寺院出土のセンブツを展示。類例のない六尊連坐のものは初唐様式が顕著。右肘に衣かかる。山田寺出土のものと関連しそう。

特別陳列 大和の古墳の鏡─宮内庁所蔵鏡を中心に─
(2月26日~3月27日)
良質の鏡がこれだけ並ぶと壮観。それぞれの資料の重要性が、専門が違うだけによく分からないにしても、正直古墳時代の鏡への認識が変わった。文様の精緻さと緻密さ、大胆さ、それを表現し得た技術。まさに最先端だ。展示では三次元形状計測による画像を全ての鏡に併置。こちらも最先端ということで。リーフレット有り(12頁)。

3月7日
慈尊院
 謝 世界遺産登録 秘仏・弥勒仏坐像特別開扉
(3月3日~3月9日)
世界遺産登録への感謝という位置づけで、慈尊院本尊・弥勒仏坐像(寛平4年<892>・国宝)が開帳。次は10年後ぐらい。快晴の午後で、厨子の中でもよく見えた。

3月12日
香雪美術館
 特別展 観世宗家 幽玄の美─能装束・面の名品─
(3月12日~4月24日)
観世文庫所蔵の仮面や装束類を展示。近世末~近代のものが中心。いい仮面はパネル展示で。『風姿花伝』や世阿弥自筆の能本「難波梅」(重文)なども展示。図録はないようです。

白鶴美術館
春季展 仏教美術は奥深い・中国陶磁は魅力的
(3月8日~6月5日)
香雪美術館までくれば、すぐ近くの白鶴美も。嗚呼…、所蔵の優品のオンパレードだった。自然光で飛鳥時代の裂や工芸品、平安後期の螺鈿蒔絵卓(重文)、賢愚経(大聖武・奈良時代・国宝)、高野大師行状図画(鎌倉・重文)などなどが見られるのは、贅沢というかなんというか…。唐時代の獅子柄香炉は正倉院にも類品があるタイプ。

国立文楽劇場
特別企画講演 古代国分寺舞楽の系譜─千二百年の時を経て二つの舞楽が巡り会う─
(3月12日・13日)
古式の舞楽を今に伝える隠岐国分寺蓮華会舞と四天王寺聖霊会舞楽を上演。ともに国指定重要無形民俗文化財。仏舞系統の演目や古式の獅子舞など、現行の舞楽では思いもよらない演目だが、こういうものも舞楽の中に組み込まれていたもの。二つを一度に見られたのはラッキー。しかも関西で。明日の分の上演は見られないのは残念だが、身は一つだから割り切っていこう。

国立文楽劇場展示室
コーナー展示 民俗芸能に見る舞楽
(?~3月13日)
「古代国分寺舞楽の系譜」上演に当たって特別展示。民間に伝わる古式の舞楽を原型とする芸能で使用される仮面などを展示。静岡県・天宮神社と新潟県・白山神社所蔵の舞楽面など。これまた、見ることができてラッキー。こんなん展示してるのん、行かなわからへん。

3月21日
東寺・東寺宝物館
 春の特別展観2005
東寺名宝展─墨と仏の造形 東寺の書跡・典籍と彫刻─
(3月20日~5月25日)
博物館友の会バスツアーに随行、説明。伽藍では講堂諸尊、五重塔初層内陣など。宝物殿では風信帖(国宝)など。観智院もついでに。五大虚空蔵菩薩像は見るたびにつくづく不思議。弘法市の日ですごい人出。

京都国立博物館
 特集陳列 仏像と写真
(1月2日~3月27日)
特集陳列 伊藤若冲
(2月16日~3月27日)
特集陳列 宸翰─文字に込めた思い─
(3月2日~4月3日)
流し見で、特に感想はなし。あ、文覚の誓文をちらりと。染織室で富田金襴もちらり。

三十三間堂
最後はこちらへ。湛慶の表現をしっかりと確認。

今年度訪問した館・寺院はのべ118ヶ所、鑑賞した展覧会・特別公開・芸能は120本でした(うち和歌山県博分9本)。