平成17(2005)年度「展覧会・文化財を見てきました。」

4月23日
和歌山県立博物館
特別展 きのくに仮面の世界─高野山周辺の芸能と紀伊徳川家の能─
(4月23日~6月5日)
和歌山県内に数多くの古い仮面が残されていることをご存じでしょうか。この特別展では自由な造形のものから洗練された様式美をみせるものまで、さまざまな仮面の魅力に触れていただき、あわせてそれらの仮面を守ってきた地域の深い歴史を感じ取って頂きたいと思います。新発見・初公開資料が満載です。図録あり(80ページ、図版380点、1500円)。渾身の一冊ですが、刷り部数が少ないので、お早めにご購入を。詳しくはこちら。

和歌山県立近代美術館
没後10年 遺業・泉茂
(4月23日~6月5日)
大阪芸大教授だった泉茂の、没後10年の回顧展。何度も大きく技法やモチーフが変わる。晩年は技巧を感じさせない、おおらかで突き抜けた感じ(のものもある)。自分の論文もかくありたいが、若くして突き抜けた風だと胡散臭さが漂うのです。自省。

4月24日
平等院ミュージアム鳳翔館
国宝阿弥陀如来坐像胎内 【月輪 蓮台】 特別初公開
(4月23日~5月8日)
国宝・阿弥陀如来坐像の像内に納入された心月輪を公開。蓮台上に、阿弥陀如来の小呪・大呪を書いた円盤を乗せている。製作時(天喜元年<1053>)の彩色がそのまま残る貴重なもの。本尊修理後、戻すのかどうか知らないのですが、生きているうちには二度と見られないかも。

滋賀県立琵琶湖文化館
平成16年度滋賀県新指定文化財展
(4月12日~ 4月24日)
県の新指定文化財を展示。考古1件、典籍1件、古文書2件、彫刻2件。西浅井町・山門区の馬頭観音坐像は平安時代後期、等身大の優品。もう1躯、馬頭観音の立像(西浅井町・徳円寺)は鎌倉後期。候補の足先は、なぜか反り返る。

MIHO MUSEUM
特別展 聖なるものの造形
(3月15日~ 6月12日)
館蔵品による全館展示。神道美術の部屋は見ごたえあり。牛に乗った片足ふみ下げの神像(頭部には肉髻がある)など。重文・地蔵菩薩立像は善派作品。ここに来た愉しみは、アイスクリームと豆腐だ。ということでレストランでアイスと豆乳ケーキを食べて、豆腐は2丁持ち帰り(1丁400円)。

4月25日
道成寺
秘仏本尊千手観音立像開帳
(3月26日~4月27日)
破損した天平期の千手観音像を像内に収めるために製作された、「鞘仏」である千手観音立像が開帳。その構造的特質から、体躯は箱型の抑揚の少ない造形であるが、面相部や頭上面などは緊張感がある。造形自体は南北朝時代まで下がらない。焼きたての釣鐘饅頭を食べる。

5月7日
鎌倉国宝館
 特別展 鎌倉の至宝-国宝・重要文化財-
 (4月21日~5月29日)
鎌倉時代の指定文化財を中心に展示。鶴岡八幡宮の国宝・古神宝や建長寺の国宝・蘭渓道隆像、光明寺の国宝・当麻曼荼羅縁起など。図録なし。

神奈川県立近代美術館 鎌倉
近代日本美術の名作展─高橋由一から松本竣介まで─
(4月9日~5月29日)
内容は、近代日本の油彩画の変遷。麗子像を斜めからみてみる。

東京国立博物館
平成17年新指定国宝・重要文化財
(4月26日~5月8日)
新指定文化財の展示。熊野速玉大社の神像が国宝。奈良・広瀬区の十一面観音像は唐将来の像か(指定では胸飾の形状を理由として国内製作とする。カッコ内は後日記す)。大阪・金剛寺の五智如来像は小像だが、平安末の奈良仏師作品。四仏の顔は厳しく、若々しい。中尊像との表現の違いはなぜだろう。滋賀・西勝寺の阿弥陀如来像が未出陳なのは残念。ああ、新指定の展示は、心浮き立つ(その反面言いようのない焦りにも襲われる)。東博はせめてもう一室提供できないものか。ゆったり見たい。会期が短いからしょうがないか。

 特別展 世界遺産 博物館島 ベルリンの至宝展─よみがえる美の聖域─
(4月5日~6月12日)
せっかくなので見ておく。平成館の展示は、どうしても壁とか飾りの演示具に目が行ってしまう。

5月22日
佐川美術館
中国国家博物館所蔵 隋唐の美術─正倉院宝物の源流を辿る─
(4月9日~6月5日)
中国国家博物館所蔵の資料の中から、正倉院宝物と関連のある国家一級文物を中心に展示。人物俑の優品や精緻な細工の金工品など。仏像では金銅天王立像は必見。宋代の木彫菩薩像など。図録あり。

栗東歴史民俗博物館
テーマ展 近江の彫刻─神とまじわるほとけたち─
(5月21日~6月26日)
栗東市内を中心に、神仏の習合した信仰のあり方を具体的に考える素材として仏像を展示。草津市・熊野神社の熊野神社本地仏9躯は、そのうち8躯が平安時代後期の像。作行の優れた熊野本地仏として貴重なもの。明治時代の神仏分離の動きを、彫刻史の立場で地域の中に落とし込んだ作業は新鮮。触発される。リーフレット(8ページ、100円)あり。

特別陳列 近江湖南と蓮如
(5月21日~6月26日)
本願寺蓮如と関わりの深い近江湖南に残る、真宗関係資料を展観。記年銘をもつ方便法身像など多数。名号も蓮如や実如の真筆と比定できるものを集める。中世の方便法身像を確認する。勉強。

滋賀県立近代美術館
 高田敬輔と小泉斐─近江商人が美術史に果たしたある役割─
(4月23日~5月29日)
近江国、日野出身の高田敬輔と、その孫弟子になる下野国の小泉斐(あやる)の作品を中心に、地方画壇を表舞台へと上げる。人のネットワークを、画風の継承から提示する。滋賀近美と栃木県美の合作の良質な展覧会。導線は、やや混乱。図録あり(220頁・2500円)。

6月4日
奈良国立博物館
特別陳列 宿院仏師─戦国時代の奈良仏師-
 (5月28日~7月10日)
室町時代後期、奈良・宿院を基盤として像造活動を行った番匠出身の仏師集団、宿院仏師の初めての一大展観。近年、奈良県教育委員会により残存資料の集成が行われたが、その後に新たに発見された資料も豊富に展示。大福寺の十一面観音・難陀竜王・雨宝童子像(永禄3年<1560>)や薬師寺の地蔵菩薩立像(永禄7年<1564>)などの大作をはじめ、工房の濫觴期から衰退期までのおよそ80年の作風変遷を丹念に追う。図録あり(72頁・1000円)。

春日大社宝物殿
特別公開 春日の面と装束
(4月1日~6月19日)
春日大社に残る平安~江戸時代の舞楽面や、江戸時代の舞楽装束を中心に展示。定慶作の散手や平安時代後期、院派の作のものなど。江戸時代の舞楽面を、能面の面打が作っているのは興味深い。中世の伎楽面も展示。興福寺仏性会で使用されたもの。耳の形などを見ると南北朝時代までさかのぼる可能性もあるか。とっても面白い資料。奈良博の本館で古い伎楽面をみて、春日で中世のものを見る。奈良ならでは。図録なし。

6月11日
大津歴史博物館
新指定重要文化財特別陳列
(6月7日~6月14日)
このたび新たに重要文化財に指定された、西勝寺の阿弥陀如来立像を公開。像内納入品に建仁3年(1203)銘がある。平安時代後期様式を継承しながら、鎌倉時代の新様がうかがえる、様式の移行期の好例。像底部で足の部分を割り抜く構造。像内納入品も出陳。リーフレットあり。

ミニ企画展 大津の仏教文化6─寺誌・縁起2─
(5月31日~7月10日)
延暦寺・園城寺・西教寺の聖経や書誌的資料を集積。天台美術を研究する上で、良質の、ほとんど知られていない史料群。個人的な興味では、明治21年の九鬼隆一らによる調査目録、比叡山延暦寺山上山下宝物目録に眼が行く。

彦根城博物館
テーマ展 中村直彦の能面─没後60年─
(5月13日~6月14日)
明治後期から昭和前期にかけて活躍した面打、中村直彦(1877~1945)の能面26点を展示。近代の能楽の衰退期に多くの貴族らの支援をうけ能面製作を行う。東京美術学校で彫刻を学ぶ。子息は仮面史研究者。このころの面打でもう一人重要な人物に、和歌山出身の下村清時(1868~1922)がいる。下村観山の兄。よく知らないので資料集めてみよう。

和歌山県立博物館(宣伝)
企画展 きのくにのやきもの
6月11日~7月17日
 県立博物館の館蔵品のなかには、やきものの一大コレクションがあります。この企画展では、紀州で江戸時代後期に制作された偕楽園焼・瑞芝焼・南紀男山焼などの優品を紹介します。

6月18日
京都府立山城郷土資料館
企画展 狛八景─南山城の名所─
(4月23日~6月26日)
江戸時代末期に成立した狛八景は、文献上だけで確認できる。それぞれの景観を地元写真クラブが撮影し、あわせて関係資料を展示。松尾神社の牛頭天王像・女神像2躯(平安時代後期)、森川杜園の絵馬、高麗寺の鬼瓦など。

奈良国立博物館
特別陳列 宿院仏師─戦国時代の奈良仏師-
 (5月28日~7月10日)
再訪。薬師寺・永禄7年銘地蔵菩薩立像をじっくり。

6月19日
大阪市立美術館
興福寺国宝展 鎌倉復興期の諸尊
(6月7日~7月10日)
巡回展の三会場目。中金堂の薬王・薬上菩薩像がお目見え。側面観をよく見れた。とにかく中金堂四天王像に執着。一部彫刻資料の照度はかなり高い。図録あり。

興福寺南円堂
特別開扉
(6月7日~6月28日)
中金堂の四天王像の余韻で、本尊像を鑑賞。こちらの四天王像もじっくり。作者問題はおいておいて、鎌倉初期の様式展開を意識しながら。

奈良国立博物館
特別陳列 宿院仏師─戦国時代の奈良仏師-
 (5月28日~7月10日)
再々訪。仙算・実清の作風をしっかり確認。

6月20日
金峰山寺
本尊蔵王権現立像開帳
(2004年7月1日~6月30日)
見納めに。中近世移行期における巨像製作と、それをなしとげた仏師の特殊性。蔵王堂自体も、柱は特殊な用材。というか、きれいな巨木を得られない中で、苦労の痕跡がありあり。

6月21日
愛・地球博
・・・つかれた。とにかくマンモスは見た。サテュロス見たかったが、会場広くて、暑くて、断念。地球・環境にやさしいと銘打ちながら、人と財布には厳しい博覧会だ。アジアのパビリオンは、ほぼすべて土産物屋であった。

6月27日
天野山金剛寺宝物館
新指定重要文化財特別公開 木造五智如来坐像
(5月18日~ 6月30日)
東博での新指定公開で気になった像を再度鑑賞。東博では出陳されていなかった、当初の台座・光背も展示。中尊大日如来と四仏の表現の違いがやはり気になる。側面観でも、頭部の位置がまったく違うので、同一工房内の作風の幅とは捉えにくい。台座は分厚く立体的な蓮弁が印象的。奈良時代っぽい。四仏の頭光・身光部の透かし彫りは見事。一歳半の息子が庭の苔を見て、コケ、とつぶやく。先日は土器を見て、ドキ、とつぶやく。じいさんか。

7月4日
高野山霊宝館
企画展 高野山の神々
(4月29日~7月10日)
高野山に残る文化財を「神々」という切り口から展観。丹生・高野明神像などのほか、仏教の天部像、荒神像等、豊臣秀吉像など、神の概念を小さくまとめない視点は好感。神と仏の領域は明確に断ち切れるものではなく、曖昧に融合しているということを、資料が雄弁に物語っている。高野山の底力。図録なし。

7月14日
熊野那智大社
例大祭 扇会式(那智の火祭り)
那智大社の例大祭・扇会式のクライマックスは最大50㎏あるという大きな松明12本への点火で、そのため火祭りとも呼ばれる。那智の滝の参道に一万人の観衆。いいアングルで写真を撮ろうとしたら、外国のテレビクルーにぶつかって静かに怒鳴られた。お互い様でしょ。午前中に行われる田楽(重要無形文化財)はビンザサラ4名・腰太鼓4名がリズミカル に舞い、シテテン(鼓)2名は後見役と最後に締めの舞を舞う。古様を留めているもの。しかしこちらはほとんど観客がいません。もったいない。芸能史は専門分野が違うのですが、とはいっても周辺領域は努めてフォローしていかなければ。

7月16日
岐阜県美術館
日本の美 三千年の輝き ニューヨーク・バーク・コレクション展
(7月5日~8月19日)
良質な日本美術コレクションを有する、メアリー・アンド・ジャクソン・バーク財団の所蔵資料を展示。宗教美術や中・近世の絵画、焼物、漆器等、様々なジャンルの佳品を一度に見られるのは楽しい。仏像では、「アン阿弥陀仏」銘(快慶)のある地蔵菩薩立像や、鎌倉時代前期の慶派仏師の毘沙門天立像、宇佐八幡宮伝来といわれる諸家分蔵の神像(10C)のうちの2躯など。春日曼荼羅や、春日若宮曼荼羅などの絵画もおもしろいもの。近世絵画は伊藤若冲の月下白梅図や曾我簫白の石橋図、池大雅の蘭亭曲水・秋社図屏風など見所満載。巡回先は広島県立美術館(10/4~12/11)、東京都美術館(1/24~3/5)、MIHO MUSEUM(3/15~6/11)。図録あり(366頁・2300円)。

7月23日
和歌山県立博物館
企画展 昔の絵はがき─紀南編─(宣伝)
(7月23日~9月4日)
戦前・戦後にかけて、郷土史家として和歌山で活躍した喜多村進が収集したコレクションのなかから、紀南地方の景観を写した絵はがきをご覧いただきます。あわせて絵はがきと同じ場所から撮影した現在の風景や紀南地域に関連する資料も展示します。

7月26日
奈良国立博物館
特別展 古密教─日本密教の胎動─
(7月26日~9月4日)
空海による純密の請来以前に日本に入っていた、いわゆる雑密関係資料を集成し、奈良時代仏教を見直す画期的な展覧会。檀像の優品を始め、唐招提寺・大安寺の木彫群、宝菩提院の菩薩半跏像、勝常寺脇侍像などなど。法隆寺金堂の吉祥天像も(毘沙門天は展示替のよう)。一回では味わい尽くせません。こんな機会は、見逃したら10年以上やってこないでしょう。奈良博の伝統が受け継がれた、奈良博らしい企画。図録あり(208頁・1500円)。

親と子のギャラリー ほとけさまのお花
(7月26日~9月4日)
恒例の親と子のギャラリー。「蓮」の意匠をさまざまな資料の中に見いだす。浄土の花、荘厳の花という把握にとどまらず、「仏法」を表すマークと捉えて大きな広がりを提示。工芸資料の優品を堪能。東大寺の木製蓮華は8世紀の作。正倉院の香印座なども想起される資料。なぜ未指定?図録あり(48頁・1000円)。

7月31日
粉河祭
粉河寺の門前町が一年でもっともにぎわう。和歌山県指定無形民俗文化財。高さ8mほどの山車が7基練る盛大なもの。山車とは別に粉河寺境内の粉河産土神社から神輿の御渡があり、「ひとつもの」や肩車された稚児など依代も練り歩く。獅子と鼻高のセットが3組もある。仮面行列があるはずなのに、今年はなかった。仮面行列自体は戦後に始まったらしいとのこと。息子が獅子舞に噛まれて大泣き。これで今年は病気無しだ。

8月1日
高野山霊宝館
高野山大宝蔵展 密教曼荼羅・コスモスの世界
(7月16日~9月11日)
曼荼羅をテーマに優品を多数集成。重文・両界曼荼羅(血曼荼羅)や尊勝曼荼羅(重文・宝寿院)、八字文殊曼荼羅(重文・正智院)、阿弥陀浄土曼荼羅(西禅院・重文)などの他、孔雀明王坐像(重文・快慶作)、八大童子像のうちコンガラ童子と恵喜童子像(国宝・運慶作)、板彫両界曼荼羅(重文)など、豪華ラインナップ。図録あり(40頁・1000円)。常設展示では新指定文化財と、このたび修理が完成した仏像である旧准胝堂安置の千手観音坐像(平安時代後期)。准胝堂には天野社から神仏分離の際に仏像が移されたようで、本像も江戸期の修理が天野・延命寺の薬師如来坐像とよく似ている。

8月18日
観心寺
法事の帰りにちょっと回り道。収蔵庫の仏像を拝観。ここは平安時代前期~後期の彫刻様式の展開を追えて、楽しい。贅沢。

8月29日
興福寺国宝館
次の用事まで、少し時間があったので立ち寄る。華原磬を見たり、ぶらぶらと。

奈良国立博物館
特別展 古密教─日本密教の胎動─
(7月26日~9月4日)
美術史学会の見学会。檀像を重点的に見る。会期はあと一週間です。お見逃しなく。

9月10日
いずみの国歴史館
大阪府和泉市の資料館。考古資料メイン。桃山学院大学の中(奥?)にある。観覧というより、和泉市史編纂委員会編集の『横山と槙尾山の歴史』(和泉市の歴史1、535頁、3000円)を買いに。西国第四番札所の施福寺を軸に、地域の歴史を原始から現代まで叙述。市史編纂の作業を、地域ごとに切り取って公刊していくもようで、触発される内容。ついでに2000年発行の図録、「和泉槙尾山の至宝展─西国巡礼四番札所のにぎわい─」(20頁・300円)も購入。

和歌山県立博物館(宣伝)
企画展 西行と田中荘
(9月10日~10月10日)
 平安時代の歌人として知られる西行は、本名を佐藤義清といいます。佐藤氏は、紀伊国田中荘(現在の打田町南部)などを拠点に活躍したたいへん裕福な豪族で、出家前の西行も巨額の絹の献納によって兵衛尉という官職に任官していて、佐藤氏の財力は都にもよく知られていました。 この展覧会では、遁世・遍歴・風雅といった、よく知られた西行のイメージを離れて、歌人・西行を生み、その生活を支えた田中荘という荘園の姿に焦点を当てながら、西行の人間像の背景を垣間見たいと思います。初公開作品も含めて、約30件を展示します。

9月24日
京都文化博物館
日本三景展─松島・天橋立・厳島─
(9月13日~10月16日)
日本三景を描いた絵画作品を中心に、近世、近代、現代の資料を集成。江戸時代の絵画が中心。仏教美術では、厳島神社の国宝・平家納経、成相寺の成相寺参詣曼荼羅など。会期中、相当展示替えをするもよう。図録あり(240頁・2000円)。

10月8日
大和文華館
特別展 復古大和絵師 為恭─幕末王朝恋慕─
(10月8日~11月13日)
 幕末に王朝美を追い求めて大和絵の復興を志した岡田為恭(冷泉為恭)の作品を集成。為恭は維新派のレッテルをはられ、攘夷派によって大和・丹波市の長岳寺辺で暗殺された。白鶴美術館の石清水臨時祭・年中行事騎射図屏風は力作。天保施米図巻(重美・個人)もおもしろい。大倉集古館の山越阿弥陀図(重美)ほか仏画類も展観。図録は会期に間に合わなかったため、予約販売でした。残念。

法輪寺
重要文化財・十一面観音立像の表現をちょっと確認。9末10初の悩ましさ。

香芝市二上山博物館
企画展 古代大坂越えの道と大阪の神
(10月8日~12月4日)
二上山麓、河内と大和を結ぶ峠は、古代の交通の要衝であり、そのルート上に、大坂山口神社が鎮座する。神像や狛犬など、この神社の資料を中心に展観。神像や狛犬は素朴なものだが、そのうち狛犬の最も古いものは、展示キャプションでは平安時代まで遡らせている。像高21.5センチの小像で、確かに古様を示している。要検討。図録あり(24頁・400円)。

10月9日
京都国立博物館
天台宗開宗1200年記念 最澄と天台の国宝
(10月8日~11月20日)
 天台宗の信仰と美術を、「国宝」を切り口に、6章に分けて展観。滋賀県・善水寺の秘仏本尊薬師如来坐像(正暦4年<993)・重文)は10世紀末の基準作例。京都府・二尊院の釈迦・阿弥陀如来立像は、13世紀第2四半世紀の作。二尊院像は京都会場の前期(~10月30日)のみの展示なので、お早めにどうぞ。第6章「京都の天台」では新発見資料が多数。愛宕念仏寺の梵天立像は平安初期、9世紀の作。一種異様な迫力あり。図録あり(400頁・2500円)。

10月11日
福井県立若狭歴史民俗資料館
特別展 若狭湾と中世の海の道─若狭湾の浦々と日本海流通─
(10月8日~11月6日)
中世、若狭湾を核とする海運の実態と、物資や文化の伝播のようすを資料から展示。パネルや写真を豊富に使用し、 濃い青色のパネルを展示室全体に貼って空間づくりを行うなど、担当学芸員氏の気合満点。仏像は重文・清雲寺の吉祥天立像(毘沙門天・吉祥天・善賦師童子像のうち)が鎌倉時代初期の慶派仏師作品。加尾区の兜跋毘沙門天立像、正楽寺観音菩薩立像、阿弥陀如来立像、破損仏群、永源寺観音菩薩立像(以上平安時代)など。慶雲寺の懸仏は弘安6年(1283)銘のある地蔵菩薩像。古文書類も広範囲に収集。会期中無休。図録あり(72頁・1500円)。

若狭彦神社
資料館だけでとんぼ返りもさびしいので、ちょっと立ち寄る。上社、下社とも社殿などは江戸時代後期建立、県指定文化財。上社の随神門に安置の随神像4対(8躯)のうち、1対(2躯)は平安時代後期の作例のよう。

10月22日
鎌倉国宝館
特別展 覚園寺─開山智海心慧 七百年忌記念─
(10月8日~11月13日)
覚園寺開山智海心慧の700年忌を記念して、同寺の文化財を展観。新たに重文指定された等身の十二神将像は応永8年(1401)から応永18年にかけて仏師朝祐によって製作されたもの。その他朝祐作品がたくさん。朝祐の位牌もあり。展示では朝祐を覚園寺仏師と位置づける。平安時代末の鉄造・不動明王坐像も。図録あり(120頁・1700円)。

神奈川県立金沢文庫
開館75周年記念特別展 茶と金沢貞顕
(10月14日~12月11日)
「茶」を切り口に中世・鎌倉の資料を展観。「唐物」のいろいろを展示。元時代の十六羅漢像(重文)は怪しげな表情の優品。陸信忠の十王図は画中に本地仏あり。国宝・金沢貞将像が展示中。金沢貞顕像や栄西像は展示替え。図録あり(80頁・1400円)。

神奈川県立歴史博物館
特別展 聖地への憧れ─中世東国の熊野信仰─
(10月8日~11月20日)
東国の熊野信仰の広がりとあり方を正面から取り上げる。仏像・神像は東北のものがメイン。毛越寺の熊野神像・脇侍像、山形・熊野大社の阿弥陀如来両脇侍像。宮城・新宮寺の文殊菩薩騎獅像・四眷属立像は平安時代後期の優品。宮城・熊野那智神社の懸仏もまとまって展示。時宗と熊野との強いつながりも提示。清浄光寺の熊野権現輿や熊野成道図など。佐渡の那智参詣曼荼羅・熊野観心十界図のセットなども。古文書も充実。図録あり(160頁・1600円)。

和歌山県立博物館(宣伝)
特別展 熊野速玉大社の名宝─新宮の歴史とともに─
(10月22日~11月27日)
熊野三山の一つ、新宮の歴史と文化を、熊野速玉大社と、新宮市内に残る文化財から提示。速玉大社の古神宝類のうち約750点や、平安初期の国宝神像、平安後期の重文神像など、見どころが満載。仏像も、都ぶりを示す優れたものばかりです。古神宝がこれだけの規模でそろうのは空前絶後。図録あり(251頁・1900円)。

 10月23日
横浜市歴史博物館
開館10周年記念特別展 よこはまの浦島太郎
(10月22日~11月27日)
浦島太郎の伝承・文学・歴史を、横浜市内にかつてあった浦島寺関係資料と文献資料を中心に幅広いテーマで提示。地域史を素材としながらも視点の広がりは大きい。展示では文字資料の山という印象が最後まであったが、図録(16頁・1800円)のデザイン・構成はそれを感じさせず、読みやすい。本づくりの参考になる。

岐阜市歴史博物館
開館20周年記念特別展 美濃の仏教美術─五大尊像国宝指定記念─
(10月7日~11月6日)
来振寺の五大尊像が国宝に指定替えされたことを記念して、岐阜県内の仏教美術関係資料を展観。仏画が中心。表記の五大尊像は、降三世明王像の画絹裏に寛治2年(1088)の開眼銘がある。至福。個人所蔵の宝楼閣曼荼羅図(重文)、正法寺・暦応3年(1340)銘の涅槃図、誓願寺の当麻曼荼羅図(鎌倉~南北朝)など。仏像では護国之寺の仏頭(奈良時代)など。図録あり(80頁・1500円)。

美術館「えき」KYOTO
よみがえる 中国歴代王朝展
(10月6日~11月6日)
「殷から宋まで」と銘打つが宋のものは数点。仏像は若干。金縷玉衣・銀縷玉衣、兵馬俑、金銀象嵌紋屏風台座など。敦煌出土の経典も若干。図録あり(2000円)。

11月5日
津山郷土博物館
特別展 高野神社の文化財
(10月15日~11月13日)
 津山市内の式内社、高野神社所蔵の文化財を展示。重要文化財・応保2年(1162)銘の随神立像2躯は等身大。欠失している手先は、両像ともに弓矢を持つ姿に復元できるとのこと。昨年新たに指定された狛犬2対も展示。指定では2対とも平安時代。大きな方の一対、現状の仕上げ面の下に、小材や薄い板を付け回し、厚く木屎を盛り上げているので、鎌倉時代に大修理をしているという評価は納得。下層の彫刻面が平安時代かどうかはおそらく評価がわかれるだろうが、やや穏健な表情だろうことは推測される。峰の途中か、峰を行きすぎたところか、というところの判断。図録あり(80ページ・600円)。

鳥取県立博物館
企画展 鳥取の山岳信仰
(10月7日~11月6日)
鳥取県内の主要な霊山、大山と三徳山について仏像や史料から紹介。契機は、三仏寺の本尊蔵王権現立像のレプリカ完成記念のよう。三次元測量で元データを取るという方法で、像に非接触でのレプリカ作成の様子が、ビデオで公開。文化財保存上よい方法だが、測量と原型作成の分の費用が余分にかさむだろう。出来映えはよい。大山寺の重文・銅造如来立像2躯、三仏寺の重文・蔵王権現立像、12世紀狛犬(顔が欠失したもの)、南北朝期の地蔵菩薩坐像、室町時代後期の男神像3躯など、彫刻資料は充実。図録なし。資料目録もなし。残念。主要な彫刻作品については同館発行の『鳥取県の仏像調査報告書』に掲載。鳥取日帰り、往復9時間は少しきついも、宿代節約々々。

11月6日
和泉市久保惣記念美術館
 特別展 アニマルランド─東アジアの美術に見る動物表現─
(10月2日~11月27日)
 日本・中国・朝鮮半島で製作された、動物に関わる古代~近世の資料を集成。200点を超える資料のうち、館蔵品は5分の1ほどで、全国から手広く資料を収集している。藤井有鄰館・青銅虎(中国・戦国)、東京国立博物館・獅子文居箱(鎌倉)、鳥獣人物戯画断簡(平安)、正木美術館・灰釉狛犬(南北朝)、大倉集古館・仏涅槃図(鎌倉)、隋身庭騎絵巻(鎌倉・国宝)、宮内庁三の丸尚蔵館・群獣図屏風(丸山応挙)、神戸市立博物館・犀図(江戸)、静嘉堂文庫美術館・十二霊獣図巻(室町)など。動物をテーマにした展覧会で、担当者の興味の赴くままに優品・珍品を集めた、というのは初めてかも。展示替えあり。図録あり(192ページ・2500円)。

11月20日
京都国立博物館
天台宗開宗1200年記念 最澄と天台の国宝
(10月8日~11月20日)
 再訪。前期に聖衆来迎寺の六道絵が展示されていた部屋は、展示替えで阿弥陀来迎図の平安~鎌倉前期の優品がずらり。園城寺の不動明王八大童子は古様な図様。来振寺本の系統。この部屋に関しては、前期と後期で思い切って展示内容を変えるのは、斬新。というか国立館らしい贅沢さ。

醍醐寺霊宝館
世界遺産醍醐寺展 祈りと美の伝承─諸院家の宝物─
(10月1日~12月4日)
醍醐寺の名宝をずらりと展観。彫刻を堪能。全体的に照度をかなり落としているが、独立ケースは大変明るく、平安前期の如意輪観音像(重文)ほか、未指定の如意輪観音、十一面観音をじっくり。仏画もたくさん展示。弥勒曼荼羅図(重文・鎌倉)、六字経曼荼羅図(重文・鎌倉~南北朝)、五秘密像(重文・鎌倉)、粉本類では十二神将図像(重文・鎌倉)など。古文書類を中心に概要を示したリーフレットあり(14頁・100円)。

11月23日
和歌山市立博物館
特別展 和歌浦─その景とうつりかわり─
(10月21日~11月23日)
多くの和歌に詠まれてきた和歌浦を、名所図や真景図、工芸品のデザインなど、さまざまな資・史料からその歴史と文 化を明らかにしている。図録あり。

12月3日
岡山県立博物館
秋期展 絵解きの世界
(11月12日~12月4日)
岡山県内に所在する熊野信仰関係資料を多数展観。県指定民俗文化財の笠加熊野比丘尼関係資料(個人蔵)から多く展示。熊野権現縁起絵巻の第三巻の巻末、熊野三山の光景は独特の構図。那智参詣曼荼羅や熊野観心十界図も、当初使用形態の分かる貴重なものが複数展示。図録無いのが残念。

吉備津神社
岡山県博でとんぼ返りはせつないので、国宝建造物見ようと意気込んで行くも、屋根葺き替えのため全面に覆屋(平成20年まで)。いつの日かまた来む。社誌購入(800円)。

12月4日
吹田市立博物館
特別展 西村公朝 祈りの造形
(10月8日~12月4日)
元美術院国宝修理所長、京都・愛宕念仏寺住職、吹田市立博物館長でもあった西村公朝の作品展。美術院時代以降の作品を見る限り、平安前期彫刻にインスピレーションを受けていることは分かる。修理技師としての一面をクローズアップする回顧展もするべき人物であろう。吹田市博に期待。図録あり(88頁・600円)。

逸翁美術館
秋期展 雅美と超俗─琳派と文人画派─
(9月17日~12月4日)
コレクションの中から、琳派作品と文人画をセレクト。与謝蕪村の闇夜漁舟図が一番目を引いた。やはり蕪村の五老酔帰図は初公開とのこと。その他、酒井抱一の水仙図屏風、蕪村の奥の細道図巻(重文)など。図録無し。

12月11日
和歌山県立近代美術館
特別展 佐伯祐三─芸術家への道─展
(11月3日~12月11日)
佐伯祐三の大回顧展。画風の変遷が一目瞭然。パリで客死する直前の高まりには身震いがする。隣の館なのに最終日に駆け込み。もったいないことをした。図録あり(220頁・2000円)。

12月12日
貝塚市郷土資料展示室
企画展 貝塚市内の神社と絵馬
(11月24日~12月22日)
貝塚市内の神社に残る、絵馬の一部を展示。南近義(みなみこぎ)神社の三十六歌仙図は天保13年(1842)銘。岸和田藩お抱えの狩野派作品。ここは近木荘鎮守。鎌倉後期に高野山膝下・天野社領となったところ。図録あり(8頁・100円)。

12月17日
奈良国立博物館
特別展 金沢文庫の名宝─鎌倉武家文化の精華─
(12月3日~1月15日)
神奈川県立金沢文庫が保管する称名寺の資料を展観。院保工房による徳治3年(1308)制作の釈迦如来立像(清凉寺式)、十大弟子像がずらり。縦3メートルを超える巨大な仏涅槃図(鎌倉後期~南北朝)も見所。なぜか未指定。禅月様の十六羅漢像と陸信忠の十王図をじっくり(和歌山県博の企画展「浄教寺の文化財」でも陸信忠銘のある十王図10幅や禅月様の異本と見られる十六羅漢像16幅を展示します)。参考出陳で大寧寺の薬師如来立像(頭部は清凉寺式、体部は善光寺式)が本館に展示。図録あり(144頁・1500円)。

特別展 特別展 東大寺公慶上人─江戸時代の大仏復興と奈良─
(12月3日~1月15日)
江戸時代、東大寺の大仏を復興した公慶上人を大々的に取り上げる。江戸時代彫刻を考える上で、こういうモニュメン タルな事業に関連する諸作品を見ることができたのは、大収穫。宝永2年(1705)制作の公慶上人坐像の仏師は椿井 民部法橋性慶。室町時代の奈良仏師・椿井仏所の名を継ぐが、このころは大坂に基盤を移している。ちなみに大仏殿の両脇侍像も大坂の椿井仏師作。夏の古密教展が奈良博の「伝統」が成せる展示だとすれば、公慶上人展は奈良博の「良心」。県立博物館がない中で、奈良博がやらねば100年たっても見られなかったはず。図録あり(184頁・2000 円)。余韻にひたって大仏殿参拝。

12月18日
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館
特別陳列 いぬ・イヌ・犬─にんげんと犬とのながいおつきあい─
(12月17日~1月29日)
犬に関する考古資料を展示。埴輪や骨など。室町~戦国時代のミニサイズの犬型土製品を多種展示。お守りだろうか(リーフレットあり。A3二つ折り。)

12月27日
功山寺仏殿
下関市内、毛利家ゆかりの寺で高杉晋作が旗揚げをした寺でもある功山寺の仏殿は、元応2年(1320)建立の禅宗様建築。国宝。ちらりと見える本尊千手観音坐像も鎌倉末~南北朝ころ。境内の下関市立長府博物館は休館日。

忌宮神社
長門国二宮。宝物殿では毛利家伝来の能・狂言面を展示(仮面群の総数は27面)。宮田筑後・天下一友閑のものなど。そのほか犬にちなんだ展示では江戸時代の狛犬。

1月8日
比叡山延暦寺
比叡山延暦寺根本中堂御本尊御開扉
(1月 1日~ 1月27日)
天台宗開宗1200年を記念して、秘仏の根本中堂本尊薬師如来立像が開帳。50~60㎝の立像。ライトアップがされていて大変よく見える、はずなのですが単眼鏡を忘れたため表情などはうかがえず。南北朝~室町時代ころか。当初像が戦国期に焼失したのち、岐阜県・横蔵寺より移された像という。他の厨子もすべて開扉。左端の厨子の4体の江戸時代の僧形像、かなり腕の立つ仏師の制作。宝物殿に立ち寄って、ケーブルカーで下山。日吉大社参拝。国宝建造物めぐり。

京都国立博物館
 新春特集陳列 神像と獅子・狛犬
(1月2日~3月26日)
恒例の狛犬展に、神像をプラス。松尾大社の女神像(12世紀)は独立ケースでぐるりと見られてありがたい。今年は戌年で、案外狛犬を見る機会が多いかもしれません。獅子・狛犬の観念的な造形を見てから、高山寺の神鹿像・馬像を見ると、特殊さをあらためて実感。その他新春特集陳列として「京都社寺伝来の名刀」(1月2日~2月12日)を開催中。絵画では参詣曼荼羅の優品(清水寺・成相寺・八坂塔・施福寺)がずらり。

1月14日
徳島市立徳島城博物館
寄贈資料展 もの・ひと・こと
(12月6日~1月29日)
この2年の間に博物館に寄贈された資料を公開。徳島藩御用絵師鈴木芙蓉・鳴門の作品群(粉本類も含まれる)や蜂 須賀家直系子孫の所蔵資料など(中世文書を含む)。今後の博物館活動の上で、核ともなりうる重要資料群。リーフレットあり(カラー、12頁)。「仔犬と正月の美術」(11月29日~2月12日)も開催中。

1月21日
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館
特別陳列 神仏習合の信仰
(1月21日~2月12日)
橿考研が発掘した鏡像・懸仏を展示。展示は大峰山寺と八王子神社のものに大きく2分。大峰山寺出土資料(重文)では、11世紀頃の蔵王権現鏡像が2点。一方は鏡背が花喰双鳥文のもの。かなり鋳上がりのよい優品だが、ただし鏡背は写真展示。その他、光背状に柄のついた資料が2点。使用形態の多様性を示す。奈良市高畑の春日若宮神主家内に所在する八王子神社出土資料は若宮本地仏文殊菩薩の鏡像・懸仏を中心に、多様な種類。制作時期は、展示では鎌倉~南北朝に設定するが、室町時代に降るものも含まれると見た方がよいよう。リーフレットあり(カラー12頁)。

和歌山県立博物館(宣伝)
企画展 浄教寺の文化財
(1月21日~3月5日)
 和歌山県有田郡吉備町(平成18年1月1日より有田川町)の浄教寺は、文明4年(1472)に明秀上人によって開山された、浄土宗西山派の寺院です。この浄教寺には鎌倉時代初期に制作された大日如来坐像や仏涅槃図(ともに重要文化財)をはじめとする、数多くの文化財が残されています。このたび、所蔵の当麻曼荼羅(鎌倉時代後期~南北朝時代)が住友財団と吉備町の助成により修復されたことを記念して、これら文化財を一堂に展示します。守られ残されてきた資料から、浄教寺と、浄教寺に什物が引き継がれた謎の大寺・最勝寺の歴史をひもとくこの機会に、地域社会がたどってきた歴史の一端を感じ取っていただきましたら幸いです。図録あり(72頁・1000円)。こちらもご参照下さい。

1月22日
奈良県立美術館
館蔵品展 生誕120年記念 近代陶芸の巨匠 富本憲吉展─色絵・金銀彩の世界─
(1月7日~3月5日)
表題のとおり、館蔵品から富本憲吉を回顧。目玉は赤地金銀彩羊歯模様蓋付飾壺。器形のよさ、富本が創出した菱形シダ文の連続体によるリズム、赤地に金・銀彩の鮮やかさが総体となってかたち作る完成された美。一見の価値あり。他は好みがわかれるでしょう。図録なし。

奈良国立博物館
常設展 仏教美術の名品
本館のみ開館。新規展示は国宝・薬師如来坐像(奈良博)のほか、「釈迦信仰の彫像」として広島県・照源寺の仏涅槃像は、事例の少ない涅槃像彫像。解説文は踏み込んだ内容。『奈良国立博物館だより』56号の「展示評」(評者:ベルリン東洋美術館 アレクサンダー・ホフマン)は、正倉院展について英語の展示解説文も必要ではないかとの文脈で、観客が「古代の首都奈良は国際都市の賑わいに満ちていたと想像し」、「日本の古代文化の国際性を過大に評価したり、奇跡的な保管を成し遂げたことに過剰な驚きを示しかねない」と提言する。無自覚のナショナリズムだと喉元につきつけられた気がして、気が引き締まる思い。

1月30日
大阪歴史博物館
特別展 日本のわざと美展─重要無形文化財とそれを支える人々─
(1月25日~2月27日)
さまざまな工芸技術を保存するための「重要無形文化財」の存在と、その技によって形作られる美の世界を紹介する。製品そのものを作り上げる技術はもとより、材料や製造道具を作る技術の保存・継承が急務となっている。製作技術の説明をもっと増やしてもよい企画ではなかろうか。図録あり(192頁・2200円)。

特集展示 大阪消防の歴史
(1月18日~3月13日)
大阪(大坂)の火事と消防の歴史を展観。近世の大規模な火事に「妙智焼(みょうちやけ)」「大塩焼(おおしおやけ)」などの呼称があることを知る。地味な展示だが、大博のコレクションの幅の広さがわかる。リーフレットあり(カラー・8頁)。 

2月4日
四日市市立博物館
企画展 聖武東遊─騎馬軍団東へ─
(12月23日~3月5日)
聖武天皇が天平12年から17年にかけて行った行幸を「聖武東遊」と呼び、その歴史的な位置づけを探る内容。元興寺文化財研究所とタッグを組んで、多くの研究者が参画した模様。図録(152頁<オールカラー>・1500円)は、いわゆる作品カタログではなく、コラムを多数載せたバラエティーに富んだ内容。

澄懐堂美術館
特別展 中国書画名品展Ⅲ
(1月22日~5月21日)
所蔵作品から、中国絵画・墨跡を選んで展示。李寅・山居図、張瑞図・太白観瀑図、黎簡・唐人詩意図が眼を引いた。会期中の出陳資料は54件だが、展示替えが多くあるよう(李成・喬松平遠図、周臣・渓山訪隠図、呉宏・山居図など)。図録あり(20頁・500円)。

2月18日
奈良国立博物館
特別陳列 お水取り
(2月14日~3月21日)
毎年この時期はお水取り展。東大寺曼荼羅(個人蔵・室町時代(16c))は、参詣者も描き込まれた東大寺参詣曼荼羅。ただしこれで絵解きをするというものでもなさそう。図録はリニューアルされた(80頁・1000円)。常設展示では総持寺の釈迦三尊像(重文)が和歌山県内の作品。傷み具合が和歌山らしい。達磨寺・仏涅槃図(重文)、清浄光寺・一遍 聖絵(国宝)のほか、明恵撰述・弟子喜海筆の涅槃会法式(重文)など。

興福寺東金堂
ふらっと立ち寄る。四天王像をしばし眺める。

2月27日
高野山霊宝館
特別陳列 高野山古絵図と地宝
(12月12日~4月16日)
高野山奥之院御廟内や周辺から出土した経塚遺品を展観。比丘尼法薬埋納遺品や南保又次郎納骨遺品、灯籠堂の周辺から出土した金銅菩薩像(白鳳時代)、金銅光背(飛鳥~白鳳時代)など。図録なし。気温0度で、寒い寒い。

3月5日
紀の川市歴史民俗資料館
企画展 紀の川流域の中世滑石製宝塔─打田町寺山遺跡滑石製石塔を中心に─
(10月1日~3月31日)
紀ノ川流域の滑石製宝塔を集める。紀ノ川下流域は滑石の産地。流域では一石五輪塔の残存事例が膨大であるが、宝塔形式のものは少ない。主たる展示資料である旧打田町寺山遺跡の宝塔群の製作時期について鎌倉時代と想定。同遺跡出土石塔の中には、全体がずんぐりとして高さの低い古様な五輪塔もある。図録有り(32頁・200円)。

3月11日
和歌山県立博物館(宣伝)
企画展 木の国─植物と花の意味とデザイン─
(3月11日~4月23日)
自然の豊かな和歌山県は、古くは木の国ともよばれました。この企画展では、植物や花を題材にした和歌山県にゆかりの絵画や工芸品などを通して、植物に込められたさまざまな意味や、その表現の多様性について紹介します。図録無し。

3月17日
神奈川県立金沢文庫
企画展 仏の荘厳─飾り讃えるもの─
(2月16日~4月16日)
修理された称名寺の幡残欠群の公開にあわせ、荘厳具をテーマに展観。幡はさまざまな技法によるもの。秦野市・金剛寺の観音・勢至菩薩像は鎌倉前期の慶派仏師作例。繊細な宝相華唐草文の光背が残存。そのほか台座・光背だけの展示など、斬新。図録あり(56頁・1200円)。

神奈川県立歴史博物館
神奈川県神社庁設立60周年記念特別展 神々と出逢う─神奈川の神道美術─
(前期2月18日~3月26日 後期4月1日~5月7日)
神像を中心に、神奈川県の神道美術を集成。新出・初公開資料が盛りだくさん。ポスター・チラシに掲載される六所神社の男神像、女神像(平安後期)や高来神社の神像群(鎌倉時代)、三之宮比々多神社の獅子・狛犬像(平安後期)、大本山総持寺の等身大の蔵王権現像(平安後期)などのほか、なんといっても伊豆山神社の男神立像(重文)。像高212.2㎝、カツラの一木からなる巨像。神像としての位置づけの重要性はもとより、10c末~11c初の彫刻としても優れた造形性を示す優品。背面右腰部や後頭部右側面に炭化痕。本像は前期(~3月26日)のみの展示ですので、お見逃し
なく。図録あり(216頁・1800円)。

3月18日
神奈川県立歴史博物館
神奈川県神社庁設立60周年記念特別展 神々と出逢う─神奈川の神道美術─
(前期2月18日~3月26日 後期4月1日~5月7日)
伊豆山神社・男神立像の見納めに再訪。立ち去り難し。次に拝観できるのはいつのことか。

東京国立博物館
特別公開 天寿国繍帳と聖徳太子像─飛鳥の祈り─
(3月14日~4月9日)
国宝・天寿国繍帳を公開。併せて重文・聖徳太子七歳像(延久元年<1069>)、 国宝・聖徳太子絵伝(延久元年<1069>)も展示。図録あり(19頁・300円)。組成の拡大カラー写真があるのは親切。

特集陳列 幕末の怪しき仏画─狩野一信の五百羅漢図─
(2月14日~3月26日)
幕末~明治期に活動した狩野一信の五百羅漢図(東博蔵)を展観。一幅に10人の羅漢で50幅。「怪しき」というより、漫画的で、教導的。東博本とほぼ同じ内容で、サイズの大きな五百羅漢図が増上寺にあり、近代初頭頃には羅漢堂で公開されていたとのこと。絵解きでもしたのでしょうか。図録あり(64頁、1300円)。

3月19日
新宮市歴史民俗資料館
企画展 新宮市・熊野川町合併記念 熊野の参詣曼荼羅の誕生
(3月7日~3月26日)
合併記念で市指定文化財・正覚寺本那智参詣曼荼羅・熊野観心十界図を核に展示。奈良市の個人所蔵になる熊野三山参詣図屏風は、江戸時代後期頃のもので、類似資料は他にない。初公開。六曲屏風の向かって右から、二曲ずつ新宮・本宮・那智の景観を描く。ベースとしての参詣曼荼羅の存在は感じさせるが、名所図的な要素や、風俗画の要素などをミックス。奈良新聞平成3年11月30日号に発見記事あり。図録なし。

3月20日
法隆寺
奈良での用事のついでに、幼児を抱いて立ち寄る。「法隆寺秘宝展」が今日から始まっていたが(~6月30日)、大宝蔵殿の門にたどり着いたのが4時5分。入館は4時までとのことで(閉館4時30分)、きまりだからと追い返される。残念。

3月26日
京都国立博物館
特別展観 18世紀京都画壇の革新者たち
(3月25日~4月9日)
サンフランシスコ・アジア美術館で開催した「Teaditions Unbound─Groundbreaking Painters from Eighteenth Century
Kyoto」展の帰国展。与謝蕪村・奥の細道図巻(重文、京博)、池大雅・青緑山水図帖(サントリー美術館)、円山応挙・波濤図(重文・金剛寺)、長沢芦雪・猿猴唐子遊図屏風(個人)、曾我簫白・寒山拾得図屏風(個人)、伊藤若冲・菜虫譜図巻(佐野市立吉澤記念美術館)などなど。残念ながら、図録なし。

特集陳列 修理完成記念 妙顕寺の文書
(3月1日~4月2日)
重要文化財・妙顕寺文書のうち、修理が終わった巻子装のものを展観。建治元年の日蓮聖人曼荼羅本尊ほか、日朗、日輪、日印、日像などの書状や宸翰、綸旨など。図録はないものの、展示資料すべての釈文を載せたリーフレットあり。

三千院・勝林院・来迎院
鎌倉時代政治史の大家、U先生の退職にあたり、謝恩会として史跡探訪。三千院・国宝・阿弥陀三尊像や後鳥羽天皇陵、来迎院の重文・薬師・阿弥陀・釈迦如来坐像などを拝観。三千院・如意輪観音半跏像(重文)の納入文書を素材に、像を前に講義を受ける。鎌倉時代の彫刻資料を歴史の中に確かに位置づけるためにも、鎌倉時代の政治史を緻密に把握し、生き生きと叙述できる力を養う必要性を、痛感。

3月27日
書写山円教寺
性空上人一千年御遠忌・新発見如意輪観音坐像公開
(3月18日~ 6月30日)
台座に延應元年(1239)銘が確認された、像高19.8cmの六臂如意輪観音坐像を本堂内陣で初公開。やや暗いものの、すぐそばで拝観できる。本体のキリカネや彩色など江戸時代の補修もあるが、本来は檀像として制作されたものだろう(サクラの可能性があるとの由)。10世紀の四天王像(重文)も開扉。ライトアップされていてよく見える。元は大講堂の像。子がこけて泣き出したので退陣。ビンズル尊者を撫でさせる。円教寺のガイドブック(19頁・300円)と姫路市文化振興財団発行の地域誌『バンカル』の、円教寺特集号(720円)を購入。

今年度訪問した館・寺院はのべ92ヶ所、鑑賞した展覧会・特別公開・芸能は87本でした(うち和歌山県博分7本)。